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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
「なに惚けて固まってるんだよ」
今までの……あの、真剣ゆえに切なげな表情を消して。
「どうだ、参ったか。俺様の"演技"は」
……ただの揶揄にしては悲哀の色を濃くさせて、彼が作ったのは弱々しい笑み。
いつもの超然とした笑いを作っているつもりなら、今のハル兄の心と体の動きはばらばらだ。重症だ。
そして――。
「……これくらいは、言ってみやがれ」
ああ、これがハル兄の大正解とする演技指導?
だとすれば――。
「お……おみそれいたしやした」
あたしはただ、平伏せざるをえない。
ハル兄の望む愛の姿は、こんなに切実で激しくて。
確かにあたしの"衝動"は、お子様すぎて敵わない。
お子様だから、ハル兄の迫真の演技にころりと騙されるところだった。
本気なのかと、一瞬――思ってしまった。
その上で、あの激情のような熱さに焼き尽くされたいと思った。
これが場数の違いだとするのなら、あたしはいつもでもハル兄と同じ土俵にたてない。……ハル兄の隣には立てない。
「ハル兄、そんな演技が出来るということは……そんな恋愛してきたの? そんなに本気になるオンナのひといたの? ……あたしが眠る前? 眠っている間? ……それとも、現在進行形?」
ハル兄の片眉が、ひくりと動いた。
オンナを食い散らかす帝王が、本気の恋愛をしていたの?
想像したら、ちくりと胸に棘が突き刺さる。
「その告白……後学の参考にさせて貰うよ、ハル兄。
あたしにも出来るかなぁ?」
ハル兄の眉間に、皺が刻まれた。
「だけどこんなにしょぼいあたし相手に、凄い名演技だったよ。ハル兄、医師免許剥奪されても、俳優に転職できるよ」
ちくちくする痛みを誤魔化すように、饒舌になったあたしは笑う。
笑う。
笑う。
――笑え。