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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
「シズ」
こちらを向いていたハル兄の顔は、怒ったようにも見える険しいもので。
……どこまでも、真面目くさった真剣なオトコの顔で。
どきりとした。
「――と、言うことにしとけ」
その顔のまま、言われた。
「え?」
なにが、"と言うこと"なのかわからない。
「俺、連日寝不足なんだよ。お前の"演技"に騙されるくらい、深刻な」
揺れた瞳が、焦れたように細められる。
「本気のように思えるほど……俺、弱り切ってんだよ。ぴくりとも動かねぇはずの俺のモンも動くほど、すげぇお前に騙されてんだよ」
弱り切っていることを訴えられているのか、あたしがそんなハル兄を騙す希代な悪女として詰られているのか、よくわからないけれど。
「ガチ勝負なんだ、ここはフェアに行くべきだろ?」
さらには勝負は続いていて、あたしは不正を働いたかのように言われている気がするけれど。
もどかしさを伝える足の動きに乗せて、あたしを見つめ続けるハル兄の口から荒い息が吐かれた。
「だから……俺の告白は、渾身で迫真の"演技"と言うことにしとけ」
ねぇ、そんないい方はまるで……
「お前の告白が演技だというのなら……フェアに行くべきだ」
ハル兄の告白は、演技じゃないと言っているみたいだよ?
「お前も俺の演技に素直に騙されろ。騙されまくって本気のような錯覚起こしてしまえ。……俺のように」
それでも"演技"を全面に打ち出すハル兄は、かなり苛立たしげで。
「そして――」
ハル兄は射るような眼差しをあたしに突きつけた。
「俺と同じように、一秒でも早く愛し合いたい気持ちになれ」
その瞳の中には、炎のように激しく燃え盛るなにかがあった。