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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 

「あああ~、まどろっこしい言い方は性に合わねぇ。けどそうしないといけねぇ理由が俺にはあるんだ……。

……ちっ。許される範囲で本音を言うぞ。お前から感じるオトコの影を許せねぇ。俺がそうけしかけていたくせに、比較されている今の状況がどうしてもオトコとして耐えられねぇんだよ。俺のモノを復活させねぇと延々とイライラは続くだろうに、考えれば考えるほど俺のモノは萎えてしまってる気がする。こんなに擦り合わせてるのによ」


 ねぇ……オトコの影って、それはナツのこと?


「もうこうなったら演技でもなんでもいい。俺を芯から騙してくれ。安心させてくれ。……お前から愛されていると」


 それはハル兄らしくもない、泣き出しそうな顔で。


 そしてハル兄は、一度大きく息を吸い……黒髪を微かに揺らしながら、息と共に言葉を出した。



「今宵は、俺を愛せ。……お前の心で」



 戻っていた。垣間見せていた頼りなげな表情は、彼の意志のもとで封じ込まれ、いつもの傲岸不遜の帝王の姿になっていた。


 何様かと思えるその姿こそが、あたしの知る佐伯波瑠で。

 弱音を見せないその姿は、物悲しく思う。



「今度は……ナツではなく、俺を選べ。今度は迷わず、俺のところに来い」



 ……それが、あたしの恋人で。愛しくてたまらないひとで。



「もう……俺を嘆かせるな。EDにさせるな」



 そんな故意的に作った演技のはずが、自然に思考に溶けていく。 

 元からそんな、大切なひとだったような気がしてくる。



「お前に俺のすべてをくれてやる。



――俺はここに居る。


だから……心ごと来い、静流」



 ゴーイングマイウェイ。

 こちらの意向なんて完全無視で、いつもしたいように生きてきたハル兄。


 裸のままでらしくもない懇願めいた寸劇を見せたのは、いつものハル兄ならば"茶番"だと一笑に付す出来事だろう。

 それほどEDが深刻なのかと思う一方で、それだけとは説明つかないなにか切迫感を感じ取ったあたしは、正直……こうしてあたしの心を必要としてくれることが嬉しかった。


 体だけではなく、本気で心で向き合おうとしてくれている気がして。
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