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目が覚めたら。
第1章 貴方は誰ですか。
 

 再びパニックになったあたしは、論文提出を明日に控えた……無精髭で浮浪者化したハル兄をまた携帯で呼び出した。彼は怒鳴りながらも駆けつけてくれ……そしてあたしに不機嫌そうに言った。


「お前の男にそこで会った!! "すみません、思ったのと違いましたと伝えて下さい!!" ……以上伝えたぞ!?」


 その時あたしは気づけばよかったのだ。


 なんでいつもハル兄はタイミングよく、彼氏と会えるのか。

 ハル兄に紹介していないのに、ハル兄はいつ彼氏の顔を知ったのか。


 そして、懲りないあたしが、都度付き合っている彼氏から別れ話を聞く羽目になっているハル兄を、ホテルに呼び出しながら17歳――。


「お前、男を萎えさせるんだとよ。やたらとほいほいセックスするな」


 とっかえひっかえ女を食い尽くす、完全女の敵のハル兄からビッチ扱い。そんなセンセーショナルな言葉が記憶の最後。


 毎回消える彼氏とともに、あたしの記憶も消えた――。



  ・
  ・
  ・
  ・




 ねぇ、どうして体の相性で愛が終わってしまうの?

 どうして皆、すぐいなくなってしまうの?


――しーし、行かないでよぅ……。



 不意に、ハル兄の弟の、ナツを思い出した。

 誰もが認める、あたし大好きのストーカー体質。


 彼氏と手を繋いで歩けば、必ず恨みがましい目で"呪"の文字を彼氏に送りつけてきた。

 あぁ、もしやナツの呪いなんだろうか。


――しーし、しーしっ!!


 ああ、うるさい。

 あたしは静流(しずる)であって、しーしじゃない。



――しーし、しーしっ!!



 うるさい年下のガキンチョ。

 ひと時、ナツの面倒をみたら懐かれてしまったのだ。


 いがぐり頭でハナタレでおデブ。

 まるでハル兄とは似ても似つかぬ……小学生に。
 



――しーし、しーしっ!!




「――しっ」




――しーしっ!!



「しーしっ!!」



 あたしは怒鳴った。



「だからあたしはオシッコじゃねぇっ!!」

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