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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
――さぁ精神統一。無心で素直に書きたまえ。そこに君の真性が出てくる。
大胆豪快というよりは、どこか繊細に思えるハル兄の美しい字。
ハル兄は実は繊細なんだろうか。
それはいいとして、まあ……どこの武士かよとツッコミ入れたくなるような文調も、まぁいい。ここは見て見ぬフリをしたとして。
"早漏"
どうしてわざわざ、こっちの字を使うかな。
筆字でここまで書くのなら、きちんと趣出して"候"にしようよ。
そっちの方が1文字で書きやすいじゃないか。
いやそんなことより。
「……なんでふたりの部屋を使わないのかな」
折角お部屋を使わして貰えても、着替えすら出来ないじゃないか。
まあ、あたしが使わせて貰っている部屋は、元々この兄弟の家の部屋のひとつであるのだから、彼らがどの部屋をどう使おうが、あたしは文句を言える立場にはないのはわかっているけれど。
ドアに耳をつけてみた。
低い声音で会話の応酬らしきものは聞こえるが、内容までは聞こえない。
こっそりドアノブを回してみたけれど、中から鍵がかけられているようだ。
他者を閉め出してまで、ふたりでなにを話しているのだろう?
そして昼過ぎ――。
「出て来ないわねぇ……」
陽光を浴びても影の薄いおばさまが、点の目をさらに小さくさせて嘆いている。
「出て来ないなぁ……」
その隣で新聞を読んでいる、やはり影の薄いおじさまも小さい目を小さくさせて嘆く。