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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「まあ今日は波瑠も週末でお休みだし、奈都も大学はお休みだから、家に閉じこもる時間はあるとはいえ。……喧嘩しているのかしら?」
「いや、弟思いの波瑠がいて、そんな事態にはならんだろう」
「だけど初めてじゃない? こんなにふたりきりで話し込むの」
「いや、初めてではないだろうよ。ほら、静流ちゃんが眠っている間、奈都はずっと、静流ちゃんが居て波瑠が寝泊まりしている病院に通い詰めていたんだ。そこでは今以上の会話がされていたはずだ。
私達以上に兄弟の絆は深い。なにせ波瑠の奈都を可愛がり方も、奈都の懐き方も……静流ちゃんの一件があってから、随分と互いの威厳を尊重した、大人の付き合い方になったと思う。だから無闇に喧嘩していたりはしない。きっと、今後に必要があるからふたりだけで話しているのだろう」
「あなた……」
おばさんがよよよと泣いた。
「過去最長のアドリブを、よく噛まないで言えたわね……」
「……ああ。それなのにどうして人前では、カンペを見ても噛み噛みですぐあがってしまうんだろう」
「大丈夫。今度こそ昇級試験の面接ではうまく行くわ」
「ああ、頑張るよ。万年ヒラで定年退職したくはないからな。息子達の方がキャリアある状況を変えねば。親として」
……色々苦労があるらしい。
「あー、そう言えば珈琲の粉がもう少しで切れそうだったんだわ。最近波瑠に奈都が毎日のように珈琲淹れてたから、かなり減っちゃったのよ。気をつけていたのに、今朝見たらもうほとんどなくて。買いに行かないと」
「ああ、ハル兄珈琲濃いの好きですものね。コーヒーメーカー水1杯分に対し、珈琲の粉マグカップ1プラス半カップでしょう? 凄い色して……」
「静流ちゃん。今、分量なんて?」
おばさまが目を細めたらしいが、目が見えなくなってしまった。