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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 

 あたしのハジメテは、なんだかんだとハル兄に自慢していたあたしだから、大体はハル兄は触れ知っているのだが、完全に例外なのは"彼氏"と"処女"だ。


 あたしは自らハル兄に報告しようとしなかった。

 結局すべて事後報告になってしまったけれど。


 ハル兄は、なぜ報告しなかったのかを問い正さずに、ただ黙々とあたしを助けてくれた。


 その心の内は語られることがないまま。


 頭に蘇ったのは、あたしが眠る直前のハル兄の言葉。 


――お前、男を萎えさせるんだとよ。やたらとほいほいセックスするな。


 何度もあたしを助ける度に、嫌嫌そうな声と態度ではあったけれど、あの時の声音は……凄く冷たいものだった。

 今思い出しても、淫魔体質のあたしを自戒させる目的以上の、侮蔑めいた苛立った私情を感じたのだ。

 なんだかんだといつも、泣きじゃくるあたしを温かく励ましてくれていたのに。

 確かにあの時あたしは……ハル兄に、言葉の内容もさることながら、それ以上に声音の冷たさで、いい感情を持たれていないと感じてショックを受けたのだ。

 
 ああ、あたしは――。

 ハル兄の周りにいる、その他大勢の女と変わらないのだと。

 簡単に股を開く軽薄女だと思われているのだと。


 それが本心なら、どうして今……そんなあたしを、医療行為なしに抱こうとするのか。どうして恋人演技を強いて、ED治療を後回しにしてまであたしと戯れ、次を確約して喜んでいたのか。


 12年前あんなに冷たくあしらったのは、どんな本音が隠されていたのか。

 それは12年後にどう変わっていったのか。


 同情? 気まぐれ?  


 わかりそうでわからないハル兄の本心。


 聞いても多分はぐらかされるだろう。

 ……否、また侮蔑めいた声音をあたしがただ聞きたくないだけだ。


 あたしは、怯えている。

 ハル兄の心になにが隠されているのか、知ることを。
 


――不器用ね……あの子。



 なんだか、おばさんの言葉が身に滲みた……。
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