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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
◇◇◇
あたしは炎天下の中、おばさまと一緒に珈琲を買いに外を歩いている。
正しい珈琲の淹れ方と、ナツが言っていたらしい正しい"カップ"の小ささを見せられたあたしは、ハル兄に何十倍もの濃度の珈琲を淹れていたことに気づいて卒倒しそうになった。
引きこもりハル兄に謝罪ができないのなら、せめてあたしが大量に使用した珈琲をきちんと買ってこようとしたのだけれど、あたしをひとり外出させたくないらしいおばさまは、
――白昼だったら私でもなんとかできるから、デートしましょ?
なんとかできるとはいかに?
含み笑いすらも消えかけそうなおばさんと、歩いて10分もしないところにあるという、御用達の珈琲専門店に買い物をすることになった。
「なんだかすみません、駆り出してしまって……」
「いいのいいの、静流ちゃんは娘なんだから。あ、奈都を嫁がせたら息子になるのかしら? ふふふ」
やはりおばさまはナツを嫁がせたいらしい。
なんでそんなに自然と出てくるのだろう。
「あの……そんなにナツとあたしを結婚させたいんですか?」
「あら、静流ちゃん嫌?」
「いえ、嫌とかではないんですけど、ナツに固執されている気がして」
声がしなくなってふっと気づいたら、おばさんの輪郭が無くて焦った。
「静流ちゃん……」
声でようやく所在が掴めた。電信柱の横に突っ立っていたらしい。急に止まらないで欲しい、本当に見失ってしまうじゃないか。
「……いずれわかるわよ、静流ちゃん。私が奈都奈都言うわけ。そしてそれは波瑠もわかっているのよ。
――静流ちゃんは、奈都を選ぶことに」
暗い声を出すおばさんの表情が見えない。
「だから波瑠は、東大の医学部に進んだのよ。せめて、そっちから静流ちゃんを近くからフォローしようとね」
まるで意味がわからない。
ただ――。
「あたしの淫魔……になにか関係が?」
あたしの直感が告げているんだ。