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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 


「ナツは……それを知っているんですか?」

「ええ、貴方が眠っている間に、波瑠が話したわ。奈都なりにも悩んでいたみたいだけど……今はそんなことより、ただ純粋な心で貴方に接している。

波瑠が言ったものは邪念にして、考えないようにしたいって言ってたわ。だからあの子は、"それ"を理由に静流ちゃんに求愛しているわけじゃない。それを理由にしたくないのは、奈都の……男としての意地だと思う」


 まるで見当が付かない。

 佐伯家はなにを知っているんだろう。

 あたしの知らないところで、なにが動いているのだろう。


「そんな健気でいじらしい奈都の姿見てると、私も波瑠も……純粋なあの子を応援したくなるのよ。決して"運命"めいた強制的な理由だけではなく」


 "運命"……?

 あたしとナツが?


 おばさんの言葉は、そう言っているように聞こえる。


 だけど――。



「……ナツがあたしを慕うのは、恋心ではないと思うんです」


 好意を向けられていることはわかっているし、嫌ではない。


 あたしだってナツが好きだ。

 ナツだから体を任せている部分だってある。


 だがあたしとナツが例えば結婚して家庭を持つといった、現実的な未来のビジョンが見えてこないんだ。

 それはハル兄に対してもそうだけれど。


 未来が見えなくても、あたしとナツが"運命"だというの?

 過去体を結ぶ度に消える恋人の存在から、永続性のある恋愛を信じられなくなっているあたしには、今までとは違う"なにか"までナツから見いだせない。

 見いだしても"一過性"に見えるあたしには、どうしても淫魔の影響をぬぐい去ることができない。


「ナツが心細い時にたまたまあたしが駆けつけた。だから刷り込みのヒナのようなものだと。だからあたしが特別だと……」


 ナツが淫魔にこだわらずにあたしに執着しているとしたら。

 どうしても恋心以外の心的作用があるのではないかと邪推してしまうのだ。


 なまじ過去のナツの執着がすごかったからこそ。

 恋心というより、病的に見えたことすらあったから。
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