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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
だが――。
「奈都が聞いたら、きっと落込むわ」
母親の目からは、そうは思えないらしい。
「静流ちゃん、そんなに深刻に考えずに……もっと素直に心に従って」
「………」
「なんだかおばさん、静流ちゃんが"淫魔"だから恋愛しちゃいけないんだ、淫魔を助ける存在だけは、絶対恋愛対象に考えては駄目だって、愛されるはずはないんだって、頑なに自分に言い聞かせているように思える」
「……おばさん……」
存在感は薄くても、考察は深い。
「消える危険も私は聞いている。それでもいい、静流ちゃんを助けてやりたいと判断したのはあの子達。もういいだけ大人だし、私はあの子達の判断を見守るわ。この判断は、12年の時間でぶれなかったわ、あの子達は」
「………」
「もしも"運命"に逆らうことが可能になるのなら、静流ちゃんの選択肢の幅は格段に拡がる。その中に、奈都だけではなく波瑠も入れてあげて」
「ハル兄も……?」
「ふふふ、だって静流ちゃん、波瑠のお嫁さんになりたいと言っていたくらいだもの、嫌いではないでしょう?」
「嫌いではないですけど、大体ハル兄は恋愛体質じゃないじゃないですか。面倒見はいいですけど。仮にハル兄を好きになって、告白とかしたとしても、鼻で笑われて……ずっとそれをネタにいじられ続ける気が……」
甘々なあの雰囲気は、ハル兄との"恋人"設定の情事だけだと……そう理解しつつも、それが持続できないことを残念に思うあたしがいる。
12年前にハル兄にビッチ扱いされて冷たく突き放されたことを、恐れとしてまだ心に持つあたしは、ハル兄が提供する体の代償に、ハル兄の望む女でありたいと思う。
たとえそれが"演技"であっても――。
演技だから……わかっている。現実は違うことを。
「ねぇ静流ちゃん」
おばさんがあたしに言った。
「あの子が静流ちゃんを抱く時も、馬鹿にした感じなの?」
「……ぶっ」
思わず吹き出してしまった。
突然なにを言い出すんだ、おばさんは。