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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「静流ちゃんは無事だけど、家の方は!?」
「家にも奇襲かけられた。あっちはナツに任せてる。おい、シズ大丈夫か!?」
昨夜あれだけ顔を合わせていたというのに、久しぶりに会ったようなその端正な顔には、帝王様の余裕は一切見られず、酷く悲痛に思えるものだった。
「ハル……兄……ハル兄……」
張り詰めていた糸が、一気に弛緩する。
「ふぇぇぇぇぇぇぇんっ!!」
涙が止まらない。
体に力が入らない。
「波瑠、ほらあんたにバトンタッチ。私は家に戻るわ」
「ああ、悪ぃな。場所決まったら連絡する」
「しっかりなさいよ、あいつらが白昼堂々人目のある場所で、拉致に動いたの初めてなのよ、それだけのリスク負っても強行しなければならない事態が発生したと、警戒なさい。なにか嫌な予感するわ」
「ああ……。おい、こっちにこい、シズ」
広げられたハル兄の腕が、あたしのガクガクする膝裏を掬うようにして体が持ち上げられた。
泣きじゃくったまま、ハル兄の首筋に手を回して縋るあたしは、完全に幼児返りだ。
子供だから……ハル兄の顔を見たら安心して泣けちゃうんだ。
子供だから……ハル兄が頬であたしの頭をすりすりしてあやしてくれると、もっともっととせがんで、ますます泣けちゃうんだ。
「許さねぇ……」
ハル兄が、恐ろしく低い声で呟いたのに、あたしは気づかなかった。