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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
まるでお城の中のような、ロココ調の高級調度に彩られたその空間は、ふかふかのワイン色の絨毯を見る限りにおいては、ざっと20帖以上はあるだろう。
天井にも繊細な彫刻細工。先ほどのラウンジ空間以上の豪奢なシャンデリアにはさることながら、一面に拡がる窓硝子からは、東京の全貌がパノラマ眺望できるらしい。
ここはVIP専用の展望台なんだろうか。
誰も客がいないけれど、休憩所のような革張りソファが遠くに見える。
「すごい、すごい、すご~いっ!!」
昂奮して窓の前に立ったあたし。
隣に立ったハル兄は、眉間に皺を寄せながらタバコに火をつけていた。
そして静かに片手をあたしの肩に回して、近くに引き寄せた。
広い東京の中、俯瞰するあたしとハル兄だけが別格。
……あたし達だけが特別。
そう思ったら、ハル兄の回された手をやけに意識してしまった。
「綺麗だね」
「……ああ、夜景はもっと綺麗だ。一緒に見るぞ」
「夜までいるの?」
「ああ。しばらくの間はこの"部屋"を使う。ここはえらばれた特別な奴以外、絶対忍び込んで来れない。簡単に言えば、これがねぇとな」
あたしの肩から手を外し、人差し指と中指ですちゃりと挟んで見せたのは、"俺様カード"。
「これはスペアだが、このホテルのVIPの証。このフロアの居住者の証拠であり、このカードで開かぬところはない」
「部屋……? え、ここはVIPの展望台じゃ……」
「違う。あっちにドアあるだろ? 寝室、応接間、キッチン……合わせて6LDK贅沢造り。きちんと居住用だ」
「ス、ス……これが噂に聞く、スイーツっすか!?」
「スイートルームのことか? あれは客に貸すものだが、ここはこのカードを持っている奴しか使えない。独占権の永久買い取りだ」
冷静に返しながら、さらりと凄いことを口にしたハル兄。
帝王は、本当に帝王ホテルを好きなだけ居住できるらしい。