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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2


「ひっく、ひっく……」



 ぽたぽたと涙が零れる。

 ハル兄に見捨てられた気分になって、心に穴が開いたよう。


 自惚れすぎていたんだろう。

 "恋人ごっこ"を引き摺りすぎていたのだろう。


 部屋の豪華さが……虚飾としか思えなくなった。

 上辺だけの取り繕い。


 なんだかあたしの心に響いてくるものがなにもなくて。

 そんなところでずっとこのまま居ないといけないのであれば、危険でも佐伯家に帰りたい。

 自分の家でもいい。


 ここは……あたしが居るべき場所ではないのだから。


 そんな時だったんだ。


 寝室で惚けていたあたしの目の前に、突然……。



「あなた誰!?」



 美女が現れたのは。

 大きい胸を強調するかのように、大きく胸の開いた黒ニットのカットソーに、体の減り張りを見せつけるような超ミニの白いスーツ。

 目鼻立ちは大きく、エキゾチックな顔立ちの美人は、委員長と同じような派手な立て巻きの髪型をしていて、外人の女優のようだ。


 所謂……女が月で、あたしがすっぽん。

 比べ物にならない、レベルの違い。


「どうしてここに居るの!?」


 それはあたしの台詞で。

 その手にあるのは……。


「もしかして……私から彼を寝取る気だったの!? 彼から……最近頻繁に他の女の気配を感じていたけど、泥棒猫がこんな小娘だったとは!!」



 ああ、神様。


――ここは選ばれた特別な奴以外、絶対忍び込んで来れない。簡単に言えば、これがねぇとな。


 ハル兄と同じカードを手に持つひとが現れました。

 ハル兄から選ばれた"特別"……間違いなく本物の恋人でしょう。



 12年後に目覚めたあたしは、ハル兄に彼女の有無を確認せず、淫魔のせいにしてハル兄の体のお世話になってしまいました。


 ハル兄の面倒見の良さと女癖の悪さにつけこむように、朝まで"恋人ごっこ"を楽しんでいました。


 だから泥棒猫という罵りは仕方が無いとはいえ、この部屋の痕跡とあたしは一切関係なく、あたしはさっき初めてここに来たんです。

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