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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「え、冤罪です……」
罪悪感があれば声は小さくなってしまう。
「は!? だってマスターカードは私が持っていて、スペアカードは彼しか持っていないのよ!? 彼なしにどうやってここに入れるというの、アンタ!!」
胸ぐら掴まれ、あたしは悲鳴を上げた。
「彼が医者だからと玉の輿狙ったんだろうけど、遊ばれてるの、あんたは‼︎ 彼には私という、れっきとした婚約者がいるの!!」
「こ、婚約者!?」
驚愕すぎて、あたしの声はひっくり返る。
「そうよ。ちゃんとプロポーズもされたのよ。見てよ、見なさいよ!! 医者の給料3ヶ月分の、光り輝くダイヤモンドを!!」
ピカーっと輝くひとつ石の指輪。
束縛を強いる結婚なんて嫌だと言っていたハル兄は、ちゃんと束縛されてもいい相手を見つけて、きちんと未来を見据えていたんだ。
ハル兄の運命の相手はいたんだ。
「ふぇ……」
悲しくて悲しくて。
ハル兄に最優先すべき1番がいると思っただけで、悲しくてたまらなくて。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇっ」
あたしが派手に泣き始めた時だった。
「シズっ!?」
ハル兄が駆け込んできたのは。
だからあたしは。
「ハル兄、こんな綺麗な婚約者がいたのに無理難題ごめんなさい!! ハル兄のEDはこの婚約者さんに治して貰って下さい!! あたしはこれからナツを頼って生きて……」
「はああああ!?」
思いきり凄んだ声を出したのはハル兄で。
「あんたこの発情猫のオトコ⁉︎ なら、首に縄かけて縛りつけなさいよ」
ハル兄に睨みつけたのは、ハル兄の婚約者さんで。
「っていうかあんた誰⁉︎」
誰って、ハル兄は婚約者で……。
「俺様を知らねぇだと⁉︎ 知らねぇのに、俺様のものに手出ししたのか。そんなに死に急ぎたいのか、あぁん? つーか、お前こそなにものだ? どうやって入った」
「それは私の台詞よ! 私は正当なるここの居住者よ」
「俺様だってそうだ」
ふたり、カードを見せ合い、激しく訝り合う。
「あっちゃぁ……」
そして現れた、見ず知らずの男。
「おい、御堂」
「ニャン吉」
ふたりに詰め寄られ、男は頭を抱えた。
なに?
なにが起こったの?