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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
――つまり、こういうことらしい。
最後に現れた、御堂大吉(みどうだいきち)……俗称"ニャン吉"と呼ばれる男はハル兄と同じ36歳で、東大同期の精神科医であり、この帝王ホテルの部屋は御堂の婚約者である、代議士の娘である上条夕子というエキゾチック美人の持ち物だったらしい。
ニャン吉のみかけは、ハル兄に及ばずとも、客観的に見ればなかなかの男前の部類に入る。
少し垂れ目がちだが、笑うと少年のような顔になるところに、母性本能を擽られる女が集まるらしく、大学時代はハル兄とつるんで派手に女遊びをしていた悪ダチだったらしい。
どうもハル兄に言い寄る気の強いタイプがお好みらしく、夕子さんは別口で知り合ったニャン吉のドストライクの女性だったようで、とうとう年貢を納めて結婚すると思いきや、独身最後の謳歌とばかりに病気を再発させたようだ。
面倒だと嫌がるハル兄を合コンやナンパのツレに駆り立て、そんな女斡旋の見返りに、世界で二枚だけしかないこの部屋に行き着くカードの一枚を(スペアだけど)、夕子さんの知らぬところで勝手に担保にしていた。
……だが、ハル兄の幼なじみとしての勘を信じれば、ハル兄はこんな部屋を呈示された如きで動く男ではない。
きっとこれはさらにぶんどった副産物にしかすぎず、実際のところハル兄を動かすだけの、なにか別の裏取引があったはずだとあたしは睨んでいる。
ハル兄は、弱みでも握られているのだろうか。
だけどそうしたら、ニャン吉はカードを渡さない気もする……。
よくはわからないなりにも、ギブアンドテイクの関係なのは間違いない。
ニャン吉はカードを持っていないから、夕子さんと一緒でなければこの部屋に来れず、あたしが見た間抜けなほどにあからさまに、自らの存在を主張していた女の痕跡というのは、夕子さん本人のものであったらしい。
夕子さんが感じていた女の影というのは、このホテル住居にではなく……日頃の彼の行動についてであり、そしてニャン吉とハル兄は、夕子さん所有のこの部屋にお互いかち合わないように連絡を取っていたようだ。
だが今日はたまたま……あたしの緊急事態ということで、ハル兄が事後報告をしていたところ、ニャン吉とばったりホテルのコンビニで会ってしまい、ふたりは嫌な予感を感じて慌てて駆けつけたらしい。