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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「ごめんなさいね、シズルちゃん……」
夕子さんはあたしに濡れ衣を着せて、泣かせてしまったことを謝ってくれた。
依然、夕子さんの部屋を担保に女斡旋をしていたニャン吉や、それに乗っていたハル兄に対する顔つきは般若だけれど、あたしに向けてのものは優しく美しいだけの顔になった。
「あたしこそおかしな態度をとってしまってごめんなさい。あたしてっきり、ハル兄が食い散らかした女のひとかと思って……」
どんな顔をしていいのやら。
夕子さんが淹れてくれたミルクティーをこくりと喉に落とす。
おいしい。
甘さはわからないけれど、この優しい感じはナツみたいだ。
「――シズ。俺はお前に掛かりっきりで、それどころじゃなかったの、お前が十分わかっているだろうが」
「だけど、あたしがナツとお出かけしてい間とか、ハル兄がお仕事している間とか、あたしが知らない時間はたくさんあるんだし」
「……そんなに信用ねぇんだったら、盗聴器やカメラでも仕込んでおけ」
不機嫌そうに言い捨てたハル兄がタバコに火をつければ、夕子さんがここは禁煙と指で火を消してしまった。
夕子さん、すごっ!!
「俺、禁煙迫る女って、虫酸(むしず)が走るんだが」
「あら気が合うわ。私も、人の家で喫煙を主張する男って虫酸が走るの」
夕子さん、なんでハル兄と渡り合えるんだろう。
「夕子はね、昔やんちゃだったんだ。だから同類の血が騒ぐんだよ」
ニャン吉がこっそりあたしに教えてくれて、思わず顔を見合わせれば、ふたりはいきりたってあたしとニャン吉を引きはがした。
そうか、夕子さんも元ヤンだったのか。
「まさか、あんた……こんないたいけな少女に手を出してないでしょうね」
いたいけとは、あたしのことらしい。
「ふん。シズは29だ」
「私より、5つ上~っ!?」
「あたしより5つ下~っ!?」
「御堂。お前、婚約者って12も下だったのか」
「惚れたら歳なんか関係ねぇ。お前だってそうだろうが。この子なんだろ、お前が死にそうになって休診中の俺に診させた……EDの元凶。な、シズルちゃん」
「え?」
突然話を振られて、なんのことやらさっぱりわからない。
「ねぇシズルちゃん、36歳はストライクゾーン?」