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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
わかっているのだろう。
そう仕向けたのだろう。
そこまでの性的魅力に溢れる帝王は、手を伸ばしてあたしを所望した。
いや、俺を欲するのなら、飛び込んで来いと言われている。
帝王にとって愛とは、与えるものではなく……獲物から捧げられるもの。そうやって彼は生きてきたのだろう。
愛が体と同義であるのなら、互いの体を欲し合う今のあたし達は、愛のある関係だと言えるのだろうか。
誰のものにもなりえない、このただならぬ存在感を持つ帝王を独占したいと思う心は、なんという名のものなんだろうか。
「来い」
ふらふらと、帝王に魅入られたあたしはおぼつかない足取りで歩く。
あの強い腕でぎゅっとされたい。
あの唇でキスされたい――。
そんな時、あたしは誰かとぶつかった。
それはグラスを持っていたオトコで、その中の液体があたしの胸元に浴びせられてしまったのだ。
「す、すみません……っ、着替えに行きましょうっ! 僕の部屋でシャワーでも浴びて下さいっ! ここの超特急クリーニングに出しますから、2時間ほどで乾くでしょう、さあ」
鼻息荒い強引な若い男に腕を掴まれた瞬間、帝王がゆらりと動く。
「みえみえなんだよ」
修羅場を潜り抜けて来たその目力の威力は半端なく。
「ひとの女を、横取り出来ると思うんじゃねぇよ」
"ひとの女"
ハル兄の恋人。
なんだろう、ふたりの時間だけではなく、こうした大勢の前で言われるのが嬉しく感じるんだ。
「べ、別に僕は……。零してしまったのはカクテルだから、きっとベタベタで気持ち悪いと思ったからで……」
「そこにある手ふきで拭いたり、ボーイを呼ぶという紳士的概念がねぇ、発情したシズの色気にあてられ、ただヤルだけを狙うクソガキは、後学に見とけ」
ハル兄は不敵に笑うと、あたしが持っていた……空になっていたグラスを奪った。
「横から奪いたいのなら、堂々と……女から求めさせてみろよ」
そして――。
「ひゃ……っ!?」
浴びせられたその液体の上を、口に含んだ大きな氷でなぞり始めたのだった。