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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2


 誰に?

 そんなの決まってる。



「……っ、波瑠。波瑠に愛されたい」


 そう口にして、ハル兄に抱きつき、はっと我に返る。


 ……今、なにを口走った?

 この、しーんと静まり返って注目されている中で。


 そしてハル兄は、スカートから引き抜いた……はしたない蜜で濡れたその指先にわざと淫猥な舌を絡めて、上から目線で不遜にあたしを見下ろした。


「そんなに俺が欲しいか。ならば、愛でてやろう」


 傲慢に思えるほどの多量の艶が、ぶわりと拡がる。


「俺の愛で、お前が壊れるほどに」


 ばたばたと誰かが倒れる音がする。


 あたしもそうなりかけたが、ハル兄がにやりと笑いながら片手であたしを支え、そしてあたしにカクテルを浴びせたオトコに言った。


「早く便所で抜け。漏らしたように思われるぞ?」


 張り詰めたオトコの股間を指摘すると、オトコは悔しそうな顔をしながらも、トイレ……らしき場所に逃げ込んだ。

 ……他にも、股間を押さえながらぞろぞろ追従する者があった。


「シズ……俺以外のオトコの前でそんな顔して濡らしたら、許さねぇからな。本当は誰にも見せたくなかったのによ、俺によってお前がこうなるんだと見せつけねぇと、さっきからちらちらちらちらあっちからもこっちからも飛んでくる"蠅"がうるさすぎて」


 そしてハル兄は耳もとで囁いた。


「……部屋に戻るぞ、シズ。早く、お前を抱きてぇ」


 そう甘く誘われても、あたしも恥ずかしいけれどお漏らし状態で。

 歩くと蜜が垂れて、絨毯に染みを作りそうな気がして、動けない。


 目で訴えれば、ハル兄は苦笑した。


「……ったく。我が儘な姫さんだな、お前は」


 皆の前だということを、決して気にしないのが帝王様。



「今度こそ、誰にも邪魔させねぇからな」



 決意めいてそう囁くと、あたしに思いきりディープキスをやらかした。

 そしてあたしの膝裏を両手で掬うと、お姫様だっこで堂々歩き出したのだった。




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