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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

 そして朝。

 熟睡しているハル兄の綺麗な寝顔を見た後、あたしは重すぎる腰を抱えて、のろのろと立ち上がり朝食の準備をする。

 昨日コンビニでハル兄が材料を買ってくれたおかげで、スクランブルエッグやベーコンとソーセージの炒め物、トーストくらいの簡易洋食は出来そうだ。

 12年ぶりの料理だ。


 作っている最中に、ハル兄が慌てた顔で飛び込んで来た。


「シズ!?」


 そしてフライパンを持っているあたしを見ると、ハル兄はその場で屈み込んだ。
 

「よかった!! 消えたかと……」

「そんなわけないじゃない」


 からから笑うと、ハル兄はなにか言いたげな切ない顔をした後、あたしを後ろから抱きしめてきた。


「……嫁みてぇ」

「え?」

「いいな、こういうの」

 振り返ったハル兄は照れたように笑い、そして朝風呂に入ると浴室に行ってしまった。


「………」


 ……嫁?

 誰が誰の?



「………」 

 
 ぼんっ。


 考えると頭がパンクした。


 熱い顔のまま、ただ黙々と料理をすることにする。


 考えるな。

 ハル兄特有のお戯れのお言葉なんだから。

 早朝の、総長ジョーク。


 ……ああ、あたしの頭、かなりやられてる。


 そんな時、どこかで音楽が鳴った。


 なんだろうと思いながら、しつこいその音楽の発生源を訪ね歩けば、窓際に畳まれてあるハル兄の服の上のスマホからだ。


 画面に出ている通話先は――。


「ナツ?」


 だから特になにも考えずに電話に出た。


「もしもし、ナツ?」


『……しーちゃん?』


 ああ、凄く久々に思ってしまう。


「うん、そうだよ」


 あたしは嬉々として答えた。
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