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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
『しーちゃん無事? また襲われたり、酷い目にあったりしてない?』
「大丈夫。ナツが心配することないよ! 元総長のハル兄がいるし!」
すると少しだけ沈黙が生まれた。
どうしたんだろう。
乗ってくると思ったのに。
『……波瑠兄は?』
「ハル兄は今お風呂」
すると、また少し沈黙が生まれた。
『……しーちゃん。波瑠兄のED治った?』
「うん、治ったよ。もうばっちり」
あたしはただ、兄思いのナツを安心させたかっただけだった。
だけど返ってきたのは――。
『そう、しーちゃんの下のお口に……挿れたんだね、波瑠兄』
ひどく悲しげな声だった。
『ごめん、しーちゃん。また後で電話する』
そしてナツの電話が切れた。
あたしとの会話を拒否するように、一方的な終焉。
「ナツ? え、ナツ?」
スマホになれていないあたしは、慌てて画面をどこか弄ってしまったらしい。見慣れぬ着信履歴が現れた。
「あれ?」
そこには昨夜、ナツの電話をハル兄が取った履歴が残っていた。
あたしにはハル兄が電話していた記憶はまるでない。
時間的にも、淫魔が引っ込んであたしが眠っている間に、ハル兄はナツと通話していたのだろう。10分の通話記録は、短いものではない。
兄弟なんだから、長電話していてもおかしいことではない。
だけど、なんだか気になった。
まだ媚薬効果が切れていないはずのハル兄が、お風呂場で1回しかしなかったことが、なんだか関係あるように思えたんだ。
ナツとの会話で、ハル兄の心と行動にブレーキが出た――?
それは直感なのだけれど。
「シズ、なんか焦げた臭いしてるぞ!?」
「……あっ、火止めてないっ!!」
ハル兄の声に、あたしは慌ててキッチンに向かった。