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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 



 帝王ホテル1階、ラウンジ――。

 ナツとの待ち合わせ時間より早くつき、ソファで待機のあたし達。


 色とりどりのドレス集団は泡沫のように消え去っているとはいえ、質の高そうな一般客にて賑わう界隈。

 ただ服装が華やかな夜会服ではないというだけで、帝王ホテルの重厚な内装とよくマッチする客は、どこぞの俳優のようにオーラが違う。


 ハル兄だってそうだ。あたしとハル兄は、ここに来た時と同じカジュアルの服装をしているというのに、このホテルに来た以上にハル兄のオーラは生彩さを強め、完全にあたしは影だ。

 EDを回復した帝王様は、無敵な俺様を見ろといわんばかりの貫禄で、今まで以上の圧倒的な存在感を見せつけながら、このホテルに異質に浮く(現実的な肉体問題としては、腰が重すぎて、浮くどころの話ではないが)あたしにやたら構ってくるから余計に悪い意味で目立ってしまう。


「なぁ……。なんで昨日のドレスにしねぇの?」


 ラウンジのふかふかソファに隣り合わせに座りながら、ずっとずっと言われ続けている。


「なぁ……。着替えに、部屋戻らねぇ? 俺も着替えるからさぁ」


 甘ったるい口調でかなりしつこい帝王様は、あたしの髪に指を絡ませながら口を尖らせる。

 お菓子をねだる駄々っ子を引き連れている気分だ。


「真っ昼間からあんなドレス着て歩いていたら、ナツが連れてくるおまわりさんに掴まっちゃうよ。ドストライクとか言ったのに、そこまで庶民の平服が嫌?」

 ちょっとだけスカートを摘まみ、庶民の平服をひらひらさせて見せた。


「ふうん? してぇの? 昨日の風呂場1回じゃ、やっぱ物足りねぇか。それならそうと早く言えよ。俺朝も我慢してたんだぞ? なぁ……今、俺が欲しくてどれほど濡らしてんだ、シズ」


 人前なのに、卑猥な言葉を耳もとで囁き、ミニスカートの中に手を入れてこようとするから、その手を思いっきり抓ってやった。


 なんで曲解する!!

 部屋よりもなんで卑猥度を上げるか、帝王!!


「違うっちゅーの!! この服が場違いで恥ずかしいなら、あたしあっちに座る。さようなら」

「待て!! なにがさよならだ。また俺様をEDにさせる気か!!」


 むくれたあたしが移動しようとすると、ハル兄に強い力で腕を掴まれた。こちらを見るその顔が焦っているようにも見える。

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