この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
帝王ホテル1階、ラウンジ――。
ナツとの待ち合わせ時間より早くつき、ソファで待機のあたし達。
色とりどりのドレス集団は泡沫のように消え去っているとはいえ、質の高そうな一般客にて賑わう界隈。
ただ服装が華やかな夜会服ではないというだけで、帝王ホテルの重厚な内装とよくマッチする客は、どこぞの俳優のようにオーラが違う。
ハル兄だってそうだ。あたしとハル兄は、ここに来た時と同じカジュアルの服装をしているというのに、このホテルに来た以上にハル兄のオーラは生彩さを強め、完全にあたしは影だ。
EDを回復した帝王様は、無敵な俺様を見ろといわんばかりの貫禄で、今まで以上の圧倒的な存在感を見せつけながら、このホテルに異質に浮く(現実的な肉体問題としては、腰が重すぎて、浮くどころの話ではないが)あたしにやたら構ってくるから余計に悪い意味で目立ってしまう。
「なぁ……。なんで昨日のドレスにしねぇの?」
ラウンジのふかふかソファに隣り合わせに座りながら、ずっとずっと言われ続けている。
「なぁ……。着替えに、部屋戻らねぇ? 俺も着替えるからさぁ」
甘ったるい口調でかなりしつこい帝王様は、あたしの髪に指を絡ませながら口を尖らせる。
お菓子をねだる駄々っ子を引き連れている気分だ。
「真っ昼間からあんなドレス着て歩いていたら、ナツが連れてくるおまわりさんに掴まっちゃうよ。ドストライクとか言ったのに、そこまで庶民の平服が嫌?」
ちょっとだけスカートを摘まみ、庶民の平服をひらひらさせて見せた。
「ふうん? してぇの? 昨日の風呂場1回じゃ、やっぱ物足りねぇか。それならそうと早く言えよ。俺朝も我慢してたんだぞ? なぁ……今、俺が欲しくてどれほど濡らしてんだ、シズ」
人前なのに、卑猥な言葉を耳もとで囁き、ミニスカートの中に手を入れてこようとするから、その手を思いっきり抓ってやった。
なんで曲解する!!
部屋よりもなんで卑猥度を上げるか、帝王!!
「違うっちゅーの!! この服が場違いで恥ずかしいなら、あたしあっちに座る。さようなら」
「待て!! なにがさよならだ。また俺様をEDにさせる気か!!」
むくれたあたしが移動しようとすると、ハル兄に強い力で腕を掴まれた。こちらを見るその顔が焦っているようにも見える。