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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「なんでそこにEDが出てくるのよ。ED知らずになったんでしょ!? もう別にあたし必要ないじゃん」

「なんで服如きでお前の機嫌が悪くなんだよ。俺がドレスにこだわんのは、俺の女のように見せびらかせるから……ああ、そんな俺事情よりも!! 昨日のことは"一夜の夢専用"だと、もう二度とドレスごとお前が振り返らねぇ気がしたからだ!!」

「"一夜の夢専用"?」


 おかしな単語を出してくるハル兄に、訝るあたし。


「そうなのか!? お前、36歳の奇跡の復活劇を……愛じゃなくただの夢で片付けようとするのか!? どこまでお前非道で鬼畜だよ!!」

「なにをまたわけのわからないことを……。質問しているのはあたしなんだけど。語尾が上がっていたでしょ、語尾が!!」


 だけど複雑なお年頃のハル兄は、またひとりの世界でぶつぶつ。


「雰囲気……変わったと思ったのは俺だけ? 少しは俺、自信持てたのに……まさかの自覚なし? 無意識の鬼畜? やっぱ……真剣に告らねぇと駄目なのか? だけどナツと……」

「ナツ……? なんでナツ?」

 するとハル兄は面倒臭そうに頭をがしがしと掻いて、あたしに言った。


「まとめる。俺のED以上に、お前の記憶には持続力がねぇ」

「それは馬鹿だと?」

「そうとも言うが、お前はれっきとした精神性のEDだ。従って、お前は時間をかけてゆっくり俺様からのEDケアを受ける必要性がある。そして俺様は……EDのアフターケアをお前から受ける必要がある」


 威張り腐った担当医兼元ED患者。


「長すぎてまとめじゃないよ、ハル兄。"10文字以内で簡潔にまとめよ!!"」


「"お前を離さねぇ" もしくは、"夢で終わらせねぇ"」


 射るような強い瞳。逃さないというような強制力を持った眼差しと言葉に、どきんと鼓動が鳴る。


「な、なんのこと? それのどこがまとめ!?」


 突き詰めて考えたくないあたしの心。

 思わずへっぴり腰で距離をあけようとすれば、帝王は舌舐めずりをしながら超然とあたしの腰に手を巻き付けて引き寄せる。


「忘れっぽくて心のED罹患中のお前に、素面でまだ言ってやんねぇよ。言うべき時に、きっちり言ってやる。だからそれまで散々逃げとけ。まぁ……逃しはしねぇけど?」


「あ、あの……?」 
 
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