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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
その時、ハル兄のスマホの音が鳴った。
もう覚えた。これはメールの時の音だ。
画面を触って内容を確認しているハル兄は、
「ナツからだ。今向かっている途中らしいが……一緒に居る警官が厄介で、中々にこちらに着かず到着時間の予想が出来ないから、先にレストランに入って飲み物でも飲んでいてくれって」
そう憮然とした顔で言った。
「厄介って……どんな?」
「さあ? そこまでは書いてねぇ。ナツの名前で隣のレストランで個室を予約しているらしい。喉渇いたし、先に入るぞ」
そしてあたしはハル兄と共に、すぐ隣のレストランに入る。
佐伯奈都との待ち合わせとウェイターに告げれば、スロープを上った先にある、大勢の人達が座る一般席から隔離された、個室のような一段高い場所に案内された。
そして注文をどうするかと尋ねたウェイターに、あたしは温かいミルクティを、そしてハル兄はなんとウイスキーを頼んだ。
「ハル兄、警官相手にアルコールはまずいんじゃ……」
「話すのは俺じゃねぇし、車を運転するわけでもねぇ。合法だ」
ウェイター目の前で、隣同士で座るあたし達はひそひそ。
そして丁度ウェイターが飲み物を運んできた時に、疲れた顔をしたナツが来た。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
困ったように眉尻下げて、にこにこと笑うナツ。
ああ、久々の麗しの王子様。
久々のナツの姿に、なんだか心が清々しくなる。
なんだろう、大人びた気がするのは。
「しーちゃん、元気そうだね。お荷物持って来たよ」
肩に抱えていたボストンバック。
ああ、なんてこの子は気が利くイイ子なんだろう。
「下着もばっちり、白いレースのひらひら。服からなにから全部僕の好みだけど、絶対しーちゃんに似合うよ。
だけどスケスケのネグリジェだけは、僕の前でね。楽しみにしてる」
「……げほげほげほっ!!」
耳もとで甘く囁かれた言葉に、あたしはむせ返る。
前言撤回。
この子の変態さは変わっていない。
「……ナツ。時間に律儀なお前の足をひっぱる"厄介者"はどこだ?」
その時、ぶすっとした顔のハル兄がタバコに火をつけながら聞いた。