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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「ねぇ、具合悪いなら上でちょっと横になる? ハル兄のお友達の婚約者さんにお部屋借りてそこに泊まっているの。きっと窓から景色みたら気分よくなるよ?」
「ううん、僕はしーちゃんが傍で笑ってくれるだけでいい。それだけで元気になるから」
「そんなのでいいの? そんなんでいいのなら、ずっと笑ってるよあたし」
儚げなナツがなんだか消えてしまいそうで、心配なあたしは無理やりにでも笑い続けた。
「ふふふ、しーちゃん……。ほっぺたひくひくしてきてるよ。ここの筋肉、普段からちゃんと使わないと筋肉痛になっちゃうよ?」
ナツが微笑みながら、あたしの小刻みに痙攣始めた頬をすりすりしてくれる。
「うーん、ナツみたいに、綺麗に笑うのは難しいね……」
寄る年の波には勝てぬということなんだろうか。
「……ハル。あっち、すげぇいい雰囲気だぞ。こうすっと自然に……ふたりの世界に入るっていうか。空気が似ているっていうか」
「……お前に言われなくてもわかってるよ、んなこと」
「なにぶーたれてんだよ。お前が何十年も手を出せない理由、弟ちゃんの存在か? ロリちゃんを兄弟で取り合ってるのか? お前……ロリちゃんの次にすんげぇ弟ちゃん大事にしてたよな、確か……」
「………。仕事、仕事っ!! ウサギ、無駄口叩いてねぇで仕事しろ、仕事!! ほらシズ、お前もぼさっとしてねぇで何でも答えろ!!」
なにやら慌てるハル兄が、突然本題を戻した。
ぼさっとなんて、失礼な……。
あたしはナツを心配していたのに……。
「ああっと、忘れるところだった。ロリちゃん、俺もその場に立ち会ってはいたけれど、途中参戦だ。先にあの白衣集団のことを聞きたいのだけれど、なにか知っていることはないか?」
その時、きゅっとあたしの手が握られた。
それは不機嫌そうな顔で琥珀色の液体を飲み干すハル兄からのもので。
指が絡んで、力を込められる。
横目でちらりとハル兄を見たが、眉間に皺を深く深く刻んで猛烈に機嫌が悪そうで。
空になったグラスを反対の手で大きく持ち上げ、ウェイターにお代わりを指示している。