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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「………」


 気づけばウサギがじっとあたしを見ていた。


 もともとウサギはイケメンだ。

 ……イケウサギというべきか?


 ハル兄のようながさつな言葉遣いを除けば、雅の情緒さを持つ、上品そうな紳士だ。

 見目麗しい顔立ちは、あたしの嫌いなタイプではない。


 その彼の目が……熱っぽくなっている。

 男のフェロモンが匂い立ってくる。


 ハル兄やナツ以外の男の艶気。

 焦らされ続けているあたしの体は、ウサギに釘付けになる。


「すっげぇ……エロ……」


 そう感嘆のように呟いたウサギの唇が、欲しくなってくる。

 どんな吐息を零しているのか、感じたくなる。


 自然と半開きになったあたしの唇。

 呼応したように、ウサギの形いい唇も半開きになった。



「やべ……俺……」



 とろりとしたウサギの目。

 そして……。



 きゅるるるるるるる。




 場を壊したのは、盛大に響いたお腹の音だった。

 立ち上がったのは血走った目をしたウサギ。



「出る――っ!!」



 凄まじい勢いで走り、ウサギは消えて行った。


「………」


 ……恐らくお手洗いに。



 ぼかっ。


「痛っ」


「人前で堂々と発情すんじゃねぇよ、シズ!!」


 グーがあたしの頭に落ちてくる。

 ハル兄の不機嫌さは半端ない。


 だったら、人前で堂々とお戯れはいいんですか!!

 おイタするあなたの弟さんもそうなんですけど!!


 ナツの手前、そう口に出来ない。


 そのナツはやけに真剣に考え込み――、


「……宇佐木さん……出るってどっちかな」

「白と茶両方だろ。どろどろとした」


「……面白くないね、それ」


 やはり不機嫌そうに顔を歪ませた。


 どろどろとした白と茶……?

 便秘だから該当する茶色はわかるけれど、白ってなんだろう?

 おしっこって白くどろどろしてたっけ?


 そして続けてナツは言った。


「折角僕と波瑠兄が楽しんでいたのに、横から掻っ攫われた気分」

「全くだ」


 同意して、ウェイターが運んできたウイスキーに口をつけたハル兄。
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