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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「しーちゃん、多分あれ……白衣着てない研究所員。だから絶対、あいつが入れたこのお水、飲まないでね」

「無色透明だが、微かに水以外の臭いがする。命までは取ろうとはしてねぇだろうが。ミン剤あたりか」


「なんですと――っ!?」


 驚くのはあたしばかり。

 スマホをいじっていたナツが、にっこりと笑った。


「よし。写真は宇佐木さんのメールに送りました、と。あとは彼がトイレから早く出て、早く照合してくれるのを待つばかり」

「ナツ、よくやったな」

「ふふふ、ハル兄の合図のおかげだよ。さすがはお医者さん、鼻が利く。だけど大したものだよね、ここまで接近してきながら淫魔の話題でまるで動じない」

「動じないからこそ、黒だろうな。こういう黒は、歓迎したくねぇけど」


 ……この兄弟、出来る!!

 恐るべし、佐伯兄弟!!


 最凶の称号はさすがだね!


「さて…と、話戻して僕のバイト先のデザイナーがその片倉っていうワケありと同一か調べてみるのと、それから書庫に行ってその本を見たいね。

とりあえず今日はこれからサクラと会うけど……」


 ちらりとナツはあたしを意味ありげに見た。



 じゃ~ら♪


 その時、ハル兄のスマホが鳴った。



 じゃ~ら、じゃ~らっ♪


 これはホラーの大御所、人食い鮫ジョーズのテーマソングだ。


 すごい、フル音源でのリアルジョーズ。

 恐いよ、恐いよ、なんでこんな音楽を着メロに選ぶんだよ。


 というより、手にしているのなら見てないで早く出てよ!

 別に誰も、その音に聞き惚れてなんてないよ。


「波瑠兄、どうしたの?」

「……病院だ」


 心底嫌そうな顔をして、取り出したスマホを睨み付けていたハル兄が、


「よしシカトだ」


 と医者あるまじき行為に及ぼうとしたのを、あたしは必死に止めて、勝手に通話ボタンを押してハメ兄の耳に押し当てた。
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