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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

 いっそハル兄が他人なら割り切りも出来る。

 だけどハル兄は、"特別"なのだと目覚めてすぐに思い込んでしまったから、余計にハル兄を昔以上に大切に思いすぎていた中で、彼のED事件によって、さらにハル兄に近づきすぎてしまった。


 恋人のふりなんて承諾しなければよかった。

 演技か本気が境界がわからなくなるなんて、思ってもいなかったから。


 ライトな関係で結ばれる、セフレの資格もない。

 ハル兄の心の在り方を求めるようになってしまったことを思えば。


 あたしはきっと、思っている以上に……ハル兄に惹かれているんだ。



 ああ……だから今。

 ハル兄に、背を向けられたことが悲しくてたまらない。


 だからこんなことぐだぐだ考えすぎてしまう。

 見捨てられたように思えてしまう。


 なんだろう……この喪失感。


 今までこんなことなかったのに。


 ああ、そうか。

 いつもあたしから背を向けていたからだ。


 いつもあたしの背中にハル兄がいてくれたから、だからあたしは安心して別れることが出来たんだ。


 "行ってこい"

 "行ってきます"


 だけど今は……あたしは笑ってハル兄を送り出せなくて。

 次の約束もなにもないままにハル兄はさっさと行ってしまったから。


 ……あたしの手に、いずれ消え去る、儚い温もりだけを残して。

 それが、寂しいんだ。





「あれ、ハルは?」



 いつの間にかウサギが戻って来ていた。


 ハル兄のことを深く考え込むあたしは、気づかなかった。


 ウサギと話し込んでいるナツが、ずっと悲しげな視線をあたしに送っていることに。

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