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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
◇◇◇
場所は変わって、帝王ホテル地下駐車場――。
怪しい輩が忍ぶレストランからの移動に、ウサギが先導して連れたのは……なぜかVIP駐車場。
即ち、夕子さんのカードだけが出入り可能な、個人駐車場スペースだった。
ただ車が出てくるのを待つだけなのに、なにこの豪奢な内装個室。
まるでホテルだ。
……いやここも、ホテルなんだけれど。
この駐車場に入れたのは、なぜかウサギが持っていた夕子さんのカードのおかげだ。
どうやらハル兄は、帰り際トイレに立ち寄り大声で叫んで、個室のドアをガンガンと蹴り飛ばしたらしい。
――このクソッタレウサギ!! てめぇ引き籠ってどろどろしたもん垂れ流してねぇで、さっさとシャバで仕事しろや、あ゛!?
ウサギ曰く、それはそれは……今は懐かしきハル兄の総長時代、ひとりで敵方に攻め込んだ時のブチギレ状態に近く、慌てて消化不良のまま出てきたらしい。
その時は既に、個室で感じていた他の幾人かの利用客の気配は消えていたという。
そうだね、ヤのつく人からもスカウトされるくらいの恐い人が、突然乱入してくれば、ゆっとり用など足せないね。逃げたくなるよね。
「マジ……殺されるかと思った」
……そんなにハル兄、病院から呼び出されたのが嫌だったんだろうか。
現役警部補の顔を真っ青にさせて震え上がらせるほど。
「で、ハルから言われたのは、渡されたカードで開くVIP駐車場に移動し、そして弟ちゃんにこれを渡すこと」
「波瑠兄のフェラーリの鍵だ……」
ハル兄所有の車の鍵らしい。どの車種なのかは、キーホルダーのロゴでわかるようだ。
「足にしろって。そして法定速度など無視してぶっ飛ばせ、だと。交通安全課の俺にそんなメッセージ託すか、普通!?」
さすがは恐い物知らずの帝王様。
それでも律儀にナツに伝えるウサギもウサギだ。
……きっと今でも、互いを信頼出来るだけの思い出を共有してきたのだろう、元総長と元特攻隊長は。
言い換えれば、かなりのやんちゃ仲間だったということだ。