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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
そういえば忘れてしまいがちになるけれど、ここは駐車場なんだ。
ハル兄の高級車は、バイク諸共ここに置いてあるのだろう。
だからあたし達をここに連れるように、ハル兄はウサギに指示したんだ。
……しかし今の今まで、ニャン吉に渡されたカードをそこまでフル利用していて、よく夕子さんに見つからずにいたものだ。真実は複雑怪奇なり。
「僕に使わせてくれるんだ、あのフェラーリ。波瑠兄が同乗してないのに」
ナツの目が感動に潤み、鍵をぎゅっと握りしめる。
「フェラーリなんてもんあのハルが乗ってるなんてな」
ウサギが呵々と笑い、あたしは言ってみた。
「ハル兄はフェラーリだけじゃないよ? ドアが上下に動く赤い闘牛もある。ものすごい早さで走るの」
「闘牛?」
「ああ、アヴェンタドールのこと?」
ナツの補足で、ウサギの目がカッと見開いた。
「ランボルギーニアヴェンタドールだと!?」
ウサギも不可思議な呪文を唱えた。
「そんなにあれ、凄いものなんだ。それ以外にもあるみたいだよ?」
「おい、おいおいおい……。ハル……一介の医者が持つような車かよ。お前本当にちゃんと真っ当な……堅気の医者、やってんだよな……?」
なにやら考え込み、そしてあたしを見た。
「なぁロリちゃん。そんな高級車持ってる金持ちの医者っていうステータスにぐらりとこねぇの?」
それはハル兄にぐらりとこないかと聞かれているのだろう。
正直今、ぐらりと来ている状態だが、理由はそんな肩書きではない。むしろそんな肩書きなんて今まで全然気にならなかったほどどうでもいい。
「あたし車の価値よくわからないし、ハル兄に車と言えば、ただハル兄をより暴走させるだけの恐い乗り物にしか思えない。現役の頃からのあのバイクにしても。お金掛かっているんだろうけど……もう嫌だ。嫌だっていっても無理矢理乗せるし。何度乗っても、生きた心地しない」
涙目で訴えると、またウサギはひぃひぃ笑い出した。
「あれに乗りたがる女は山にいたんだぞ? つーか、ハル何度も乗せたんだ、無理矢理。そうかあれは……まぁいいや。いいけど、ハル……あはははは。こんなに嫌がられて、ざまあ!!」
上品に整った顔が子供のようなあどけない顔に緩んでいる。