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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「なるほどこりゃあハルも苦戦するわけだ。だけどロリちゃん。スリルを感じてのドキドキは、恋愛のドキドキと大して変わらねぇもんなんだと。だったらさ……?」
ウサギの顔から笑いが消え、変わって妙な妖艶さが纏われた。
外見慎ましい和装の荒くれ男が醸す色気というのは、ミスマッチゆえに惹き込まれる。
「俺……ハルよりスピード狂なんだよ。俺の運転する車に乗れば、これ以上ねぇってくらいのドキドキ、味わうことが出来るぜ?」
意味ありげな流し目を寄越し、あたしに含んだ笑いを見せてくる。
「最高のドキドキ、俺に感じてみねぇ?」
「……宇佐木さん」
それまで黙ってスマホをいじっていたナツが、低い声で言った。
……恐っ。
ナツの怒った笑い顔、恐っ!!!
「確か『飛龍』での貴方の仇名…"ハイエナウサギ"ですよね」
ハイエナなのかウサギなのか、また微妙。
強いのか弱いのかよくわからない仇名だ。
「お~、弟ちゃん。当時チビだったくせによく知っているな。"サバンナの掃除ウサギ"として、よくハルに牙をむく奴らに特攻として真っ先に突っ込んでいたからな」
その頃からハル兄は、サバンナにいたらしい。
荒れ放題のサバンナは、綺麗好きな(……多分)ウサギが、伸びまくった雑草をむしゃむしゃ食べて、ぴょんぴょん跳ねながらこまめに掃除してくれたおかげで(……多分)、帝王様はきっと住み心地がよかったことだろう。
「それだけではないでしょう? 波瑠兄が食い散らかした女の処理班という意味でも、大分ご活躍されていたとか」
にっこりとナツが笑う。
「だとしたら、食べ物には困らず……美食家なんでしょうね。今でも」
綺麗な笑い顔で吐くのは、慇懃無礼という名の辛辣な毒の矢だ。
「だけどしーちゃんは僕がおいしく頂くんで、ハイエナさんの出番はありませんから。というか、彼女は食い散らされてませんから、とっとと違うところに行って下さい」
"ふざけんじゃねーぞ、殺されたくなかったらとっとと消えろ"
……くらいのものを、目で語っているナツ。
36歳元特攻隊長相手に。