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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「なぁロリちゃん」
「はい?」
あたしは自分でも思っていた以上に単純構造で出来ているらしく、無意識に『あたし=ロリちゃん』で返事してしまっている。
決してあたしはロリではないのに、体はロリと認識しているとはいかに。
「ここからは、スパイがいるあのレストランでは出来なかった大まじめな話だ。被害届が佐伯家からもコンビニからも出ていて悪ぃがよ、多分……警察はロリちゃんの拉致未遂事件解決に動かねぇ」
それは助けを求める市民を見捨てるという、公僕らしからぬ発言だった。
「管轄外の俺が事情聴取に動いているのは、俺がたまたまその場に居合わせたという偶然という名目に見せかけた、実は警察の"体裁"のためだ。被害届に対応したという事実を作るために、俺はただ利用されている……と俺自身は思っている」
「やっぱり……」
答えたのはナツ。
「それは、警察が動くに足らない小さすぎる被害だから、ということ?」
あたしが聞くと、代わりにナツが答えた。
「逆。相手が、警察に圧力かけてもみ消せるほどの力があるから、だよ」
「あの白衣集団が?」
「ん。そうじゃなければ、白昼堂々ナンバープレートを見せてしーちゃん拉致に動かないよ。実際、見られていて被害届がでているのに、管轄外の警官が派遣されている時点で、警察はこの件から手を引いているんだと思う。
……そうですよね、宇佐木さん。きっと貴方が知る情報は警察情報ではなく、貴方が独自に調べた結果だ。たとえば……しーちゃんを拉致しようとした車の所有者あたり。……違います?」
「末恐ろしいクソガキ……いや、弟ちゃんだな。だてに大都大学現役で入ってねぇな。そうだよ、弟ちゃんの言う通り……担当部署が動いている形跡はまるでねぇ。俺が報告したコンビに店員、或いは弟ちゃんの母親の目撃証言もなかったかのように消去されている。
コンビニおける監視カメラの映像も、その時だけぶれて全然見えなくなったなんておかしすぎるだろ。しかも科捜研でも再現不可能の上に、没収ときたもんだ。さらには俺が記憶している車のナンバーから所有者を照合しようとすれば、データベース閲覧に規制がかかる。警部補権限でも、だ。だから仕方がねぇ、陸運局にいる飛龍のOBに頼みまくって、個人で調べ上げた」