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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「……で?」
「その苦労話はスルーかよ、弟ちゃん。まぁいい。ロリちゃんを拉致ろうとした車は、『エベイユ株式会社』所有のものだった。ここは女性に特化した化粧品やらアイテム開発やらで、数年前から躍進してきた会社だ」
「『エベイユ』……フランス語で"覚醒"、か。僕は聞いたことがなかったな……。ねぇ宇佐木さん。この会社の傘下に研究所があります?」
「ある。免役研究所がな。そこからのデータが商品化されているらしいが。公式資料は『抗体試薬などの医薬品を研究開発する施設』ってとこだ」
「……ふうん、免疫、抗体……。ん……これ、波瑠兄の分野だな」
「それと。さっき弟ちゃんがメールしてくれた写真。警察とは別ルートで調査させたら、ここの研究所員らしい。先刻連絡受けた」
ナツの目がきらりと光る。
「白衣集団はその研究所が怪しいな。しーちゃんを実験するつもりか。新興企業が警察に圧力? バックに誰かいるのか?」
「詳細はまだ掴めてないが、しかし免疫研究所になんぞ、なんでロリちゃん狙われているんだ? 特殊体質なのか?」
「え? いや、その……」
大根役者はアドリブに弱い。
「ん、先天性の奇病にかかっているんです。だから波瑠兄が、しーちゃんを治すために医者になったんですよ。最高峰の環境で」
「………。だからあいつ、突然東大受験するなんて言い出したのか。なんだか長い間、大量の全国の大学案内のパンフやら資料やら取り寄せて、たまり場で腕組んで顰めっ面して考え込んでいたと思ったらよ、高3の11月に赤本……って言うのか? 過去問解きだしてよ。あいつの突拍子のなさはいつものことだったから、はいはい頑張れ~って手を振って笑ってたんだけど、まさか合格するとは」
「……ナツ。東大って、高3の11月から赤本解くだけで合格出来るの?」
「波瑠兄さ、父さんと母さんから……総長をやるのを認める条件として、学内成績十位以内キープを言われてたんだよ。で、毎回首位。500人中」
くらり。
あたしは確か……200人中、120~130位をちょろちょろだった気がする。
ハル兄から"アホタレ"呼ばわりされる正当な理由はあったらしい。
ハル兄が……。
あの、何度言っても女を無残に食い散らかしてポイ捨てする、学習能力ないんじゃないかと思っていた、あの女の敵が……首位。