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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「ハルはすげぇ記憶力がいいんだ。閃き型で、一を知ればすぐ応用まで発展できる感じで、連鎖的に一気に覚えるんだよな。全然そう見えねぇんだけど。弟ちゃんはどうなの?」
「僕は……同学年にサクラがいたから。サクラは本当に頭がよすぎて、僕はサクラに敵わなかった。だから万年2位。僕は出来悪いです……」
ナツは悔しそうに笑った。
……自称「出来悪い」この子は2位。
高IQ維持でもしているのか、クソメガネは貫禄1位。
なんですか、それ。
イケメンは皆、そんなオプションつきですか?
そう思いながら、ウサギをみる。
このイケウサギ、黙っていれば見目麗しいどこぞの御曹司に見えるけれど……喋り方や品性は高尚とは言えない。
ならばきっと、あたしの仲間に違いない。
Welcome THE アホタレ!!
「すげぇな。自分の力でそれだけの成績ならよ。飛龍の仲間なんてよ、ハルからタバコ1カートンで一教科のヤマ張って貰って、それでも20位くらいなのによ。ロリちゃんは?」
「……ノーコメントで」
……もうこの話題やめた方がいい。
あたしの気持ちをわかってくれるお馬鹿なんて、ここにはいまい。
疎外感に黄昏れたい……。
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などと、落込んでいる間に気づけばあたしは、ナツに手を引かれて、フェラーリの助手席に座らせられていた。
うっすらとウサギにバイバイされた記憶はあるが、成績お披露目以降の記憶はほとんどない。
なにか言われたような気もするが、きっとナツが詳細を聞いていてくれているだろう。
「うぉっ、これがフェラーリ!!」
闘牛よりも跳ね馬マークの方が馴染みがあるが、初乗りだ。
VIPの駐車場において車庫から出てきた車は、今まで談話していた部屋の横に現れたようだ。
フェラーリも密室なら、フェラーリを納めている場所も密室。
今、あたし達は二重の密室の中にいる。
「ねぇ、しーちゃん」
左側の運転席に座ったナツは、あたしの手を握ってきた。
「……会いたかったんだ」
その美しい顔を悲しげに歪めさせながら、発せられた声は心を打つほど切なく、
「しーちゃんの温もりが、恋しかった」
泣いているように震えていた。
ナツ……?