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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
あたしを抱けば、ハル兄と同じスタートラインに立てると思っているらしいナツ。
あたしを抱いていても、いつもナツのことを気にかけているハル兄。
セックスってなに?
兄弟の意地の張り合いの手段?
ちくりちくりと、消化不良の棘が胸の奥を刺してくる。
仲いいのは大いに結構。
あたしは彼らを危険に陥れて生きているから、文句つけるのは筋違い。
しかもあたしはいたぶられているのではなく、気持ちよくさせて貰っている……他の女からしてみれば、恵まれすぎた身分だということもよくわかっている。
わかってはいるけれど、もっとセックスというものは神聖でありふたりの愛を育てるもので、男女間のみにて大切に秘匿される純粋なものではないかと思ってしまうのは……あたしの心が17歳のままだからなのだろうか。
ただひたすら恋をして、永遠を夢見ていたあの頃。
恋に恋して、だから体を繋げて……。
心の先に体があった。
今は……体からすべてが始まっている。
12年前に想定していなかった、ふたりに対する……あたし自身の心の揺らぎを感じている。
体を繋げなければわからなかったものがある反面、体を繋げても、いまだ兄弟しかわかりあえないものがある。
どんなに大切にされても、あたしを近づけさせない兄弟の領域がある。
……あたしは、その境界がどこからなのかわからない。
近づいているようで遠ざけられている、あたしひとりだけ爪弾きにされたような面白くない感情。それは、きっと嫉妬という感情に近いのだろう。
ハル兄と居れば、ナツに。
ナツと居れば、ハル兄に。
そんな感情を抱く自体本当に自分でも馬鹿だと思うけれど、もしもこの先、彼らがあたしの体に興味を失ったのなら――。
あたしはどこまであの兄弟に踏み込むのを許されるのか。
体を媒介にせず、どこまでの"特別性"をもてるのか。
永遠に保障される確固たるものを、あたしには持ち合わせていない。
それが時々、急に恐くなる。
今、あたしの中から彼らが居なくなったら――。
「――……しーちゃん?」
気づいたら、ココア色の瞳があたしを覗き込んでいて、あたしは驚いてシートに仰け反った。