この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「ごめんね、驚かせちゃった? 気分悪い? 車酔いしちゃった?」


 綺麗なナツのお顔が悲哀に歪んでいる。

 本当にこの子の"哀"の表情は、美しくて儚げで……心が締め付けられる。


「あたの方こそ心配させてごめん。酔ってないよ、あたしは元気。ちょっとぼぅっとしちゃっただけ。ええと、ここは……」


 車は停車しており、場所は道脇ではなく……どこかの敷地内。

 周囲に高級そうな車が停まっているあたり、駐車スペースなのだろう。


「大都大学中央棟の来賓客用の裏駐車場。さすがにこの車で学生と同じ駐車場は停められないからね、警備員さんに許可貰った。それにせっかくしーちゃんといるのに、変な野次馬に邪魔されたくないし。ランボルギーニで堂々乗り付けた波瑠兄ほどの騒ぎにはならないとはいえ」


 ……ああ、帝王様が弟君をお迎えに来校された時は、凄かった。

 ただあの野次馬が群がったのは、珍しい高級車への興味と言うよりは、それを運転する男の興味に向けられていたと思う。

 このフェラーリの凄さはわからないけれど、フェラーリという車が高級だと言うことは、車に興味ない一般庶民のあたしでさえ知るところ。

 
 そこから降り立つのが、現役モデルのナツということ時点で……ナツは今まで以上にもてはやされ、凄まじい黄色い絶叫や失神者が続出するだろう。


 ただ願わくば。

 高級車持ちだとかいう、どうでもいいオプションでナツのステータスを勝手に引き揚げないで貰いたい。


 ナツの魅力はそんなところではない。

 たとえ人前で無愛想で笑顔を見せなくとも、そこをすり抜けた"素"の部分を見ようとして欲しい。

 兄上のように、自由気儘に凄まじいオプションを好んで身につけようと、それに勝る"素"の部分を他人に見せつけて屈服させるそんな自己顕示欲は、ナツにはない。

 だが慎ましいように見えて、ナツだって彼なりの強い自己主張がある。

 帝王を羨望視していても、追従や模倣するのではない……、彼特有の輝く個性がある。


 だから願わくば――。

 ナツしか持てないその個性に、皆の目が向くことを。
/920ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ