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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「中央棟って……前に行った、あの電光掲示板があるところ? 教授の研究室とかあったのもそうだっけ」
「うん。大学に来た予定としては、サクラと二食……カフェテラス風の第二食堂と呼ばれるところで待ち合わせしているから。それと図書館の書庫で謎の冊子の探索、そして売店の二階に行きたい……この三点」
今日の予定は目白押し。
「しーちゃん、気分が悪いならここに居て? 飲み物や酔い止め買ってきてあげるから」
ナツが切なそうな顔をして、あたしの頭を撫でる。
「本当に大丈夫だって!! ここでひとりでいるより、ナツとお散歩したい」
ひとりで居れば、ぐだぐだどうでもいいこと考えすぎてしまう気がするし、置き去りにされるのはひどく寂しい。
天気は悪いけれど、ここはナツに頭からお花を咲かせて貰って、ナツ(のお花)に癒やされて気分転換しなきゃ。
お散歩、お散歩!!
するとナツは、ぽっと顔を赤らめながら、はにかんだように伏し目がちになって顔を緩めた。
「しーちゃんから、デートのお誘い貰っちゃった」
……はて。あたしだけが一方的に癒やされる"お散歩"に、ナツが悦ぶデートの要素はあるのだろうか。
自分勝手な思いで、ナツを利用している……。
そこに自己嫌悪を覚えたあたしは、正直に言葉の齟齬を訴えようとした。
「デートのお誘いだよね?」
にっこり。
なんだろう、あたしがなにを言い出すのか判っているかのように、先回りして遮ろうとする……この切実めいた迫力ある微笑み。
「う、うん。デートのお誘い……」
押し切られてしまったあたし。
「ふふふ。しーちゃんからデートせがまれちゃった。キャンパスデート第二弾、嬉しいな……」
事実が微妙に変わってしまったが、ナツが幸せそうだから、デートでいいや。
「大学は僕の領域内。今日は授業はないから、サクラが来るまでの間だけど……どこでしーちゃんをまた可愛く啼かせようかな……。せっかくお誘い受けたのなら、やはりご期待に応えないと。ふふふ」
……なにやら物騒な不穏な言葉は、聞かなかったふりをしておこう。