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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

 
 ――さて。

 これからすべきこと三点のうち、まずなにをしよう。


 それを中央棟内の電光掲示板前の長椅子に座って話し合っていたのだけれど、ナツのスマホが頻繁に鳴る。

 着メロは、オーケストラな『愛の賛歌』。

 それは突然鳴りだしたのだはなく、中央棟に向かう途中も鳴り響き、ナツは一旦電話に出たんだ。


――ちょっとごめん、しーちゃん。


 あたしから離れたところで移動し、結構話し込んでいたように思う。

 そして戻ったナツは少し固い顔をしていて、何度かため息をついた。


 なにかトラブルでもあったのかと聞いてみれば、


――う……ん。ま、ちょっとね。


 すごく気になるような曖昧なお返事。


 それ以降、愛の賛歌はあたし達の会話を遮るように頻繁に鳴るものの……ナツはスマホを取り出すだけで、通話ボタンを押そうともしない。


 ちらりと横目で見たナツのスマホには、『モモ』と書かれている。


 モモ……?


 名前からして女の子だろう。
  
 ナツに親しい女友達はいたんだろうか。


 そう考えれば、別にナツはこの12年間、眠っているあたしに義理立てて独り身を貫いたわけでもない。

 あたしのためという名目はあるが、ハル兄によって童貞を捨てて、淫魔に立ち向かうべく修行をしていた身の上だ。

 怪しい館で、怪しい遊び……否、修行をしていたらしいし、ナツの影に"彼女"という特別な存在でなくとも、体だけの女がいてもなんら不思議ではないのだけれど。


 モモって……誰?


「ナツ。スマホ見てないで、出たら?」

「ううん、いいんだ」


 通話ボタンを切って、"うるさい黙れ"の伝達を相手にせず、あくまで不在で貫こうとする相手はどんなひとなんだろう?



「だけど……大事な用かもよ?」

「……いいんだ。今は……」


 憂い顔。

 今じゃなければ出る相手なのに、なんで出ないの?


 あたしがいると出られない相手?

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