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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
  

 なんだろう、この胸のもやもや。

 なんでナツは、どんな相手なのか話そうとしないのだろう。


 鳴り響く、愛の賛歌。

 これはスマホに用意されていた曲ではないことは、同機種であるあたしは知っている。


 ナツが教えてくれたんだ。


――僕の着メロは基本スマホに入っている曲だけど、大切な人はちゃんと別にダウンロードした曲に指定しているんだ。しーちゃんも、波瑠兄も別々な曲。曲名は……。


 その中には愛の賛歌はなく、一体それを指定した大切な人とは誰か。

 すごく気になって仕方が無い。


 ナツは病室でもバイト先からのメールだとかきちんと教えてくれたのに、モモさんだけに限っては言葉を濁していいたがらない。


 誰よ、モモ。


「しーちゃん、売店二階に行ってちょっと貰ってくる。多分それが一番早く終るはずだから」


 はぐらかすかのようにナツは売店に走った。

 え、あたし放置?


 ちょっと、ナツさん……なんでスマホ握りしめていくの?


 ……モモさんと電話するため?


 ちょっと教えてくれるだけでいいのに。

 そうすればナツのプライベートに干渉なんてしない。


 "大学の知り合いだよ"

 "バイト仲間だよ"


 なんでもいい。

 モモさんがどこの誰だか、それだけ教えてくれればいいのに。

 ……なんでナツは言いたがらないの?



 そんな時だったんだ。




「――大丈夫だよ、モモ!!」



 横から歩いて現れた女の子の二人組が、あたしのいる長椅子の横に座ったのは。



 ……モモ?



「彼は他の女の子と一緒にはいない。絶対、向こうは気があるよ!!」


 ショートカットの女の子が、長い黒髪をした女の子の腕を掴んで慰めているようだ。


「だけど……あまりにしつこく詮索しちゃったから、電話出てくれなくなって……。嫌われたかも……」


 清楚系の女の子。お姫様みたいで凄く可愛い。

 顔を真っ赤にさせている。


「そんなことないって!! だってさ、あのクールな彼がモモだけは電話してくれるんだよ!? 電話に出ないのは、今バイトかもしれないし。歩いていて気づかないだけかもしれないし。絶対モモと両想いだから。絶対かけ直してくるって」



 ………。


 ねぇ、このモモ……、ナツの画面のモモ……?

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