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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 


 その時、鳴り響いたのは誰かの着うた。

 切ないバラード系のものだ。


 モモはスマホをタップして耳に当て……感極まったように泣き出した。


「ありがとう……かけ直してくれて……。私……嫌われたかと……」


 通話しながら、嗚咽を漏らす。


「うん……ん……。……。……ごめん、ごめんね……嬉しくて。……え、明日ドライブ? 空いてるけど」


 可愛いすぎる恋する乙女が、さらに可愛く沸騰した。

 隣で友達が指を鳴らして喜んでいる。


 それを見ているあたしの心は冷ややかで、どす黒い感情が渦巻いていた。


 ナツに電話していたモモは、この子に違いない。

 そしてナツは、あたしが邪魔で電話できなくて、それであたしと離れたところから……この子に電話かけているんだ。

 この子が喜ぶ誘いを囁いて。



 凄く可愛いモモ。

 ナツとお似合いのお姫様。


 なんだ、いるじゃない。

 ナツが助手席に乗せたい子。


 モモは電話を切ると、膝に電話を置いて顔を両手で覆った。


「どうしよう……明日誘われちゃった」

「おめでとう。絶対明日告られるんだよ。さすが今年の大都大学ミスコン優勝者、とうとう彼を落としたか!! さあ勝負下着買いに行くわよ、モモ!! 彼が好きな白いレースの下着を買うのよ!!」

「え!? 気が早いよ~」



 ……居たたまれない。


 二股かけられてた……というには、曖昧すぎるあたしとナツとの関係。

 ナツから好きだと言われても恋人同士でもなく、セフレとも言えない。ただの幼馴染みだ。


 そういえば、モモからの電話を受けてからナツはあたしと手を繋ごうとしなくなった。

 それまで……そんな素振り見せてなかったのに。


 ナツ……本命いるんだ。

 清楚系のお姫様、ナツのドストライクだよね。


 あたし、なんだったのかなあ……?

 ナツが明日帰ってこなかったら、あたしひとりだ。



 ずくずくと胸が痛んだ。
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