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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
――しーちゃん、好きだよ?
……悲しい。
どうしよう、すごく悲しい。
――本当にしーちゃんが好きなんだ。
あたし……モモちゃんに嫉妬してる。
ナツとお似合いすぎる相手に、凄く嫉妬してる。
自惚れすぎていたんだ。
ナツの愛情はあたしに向けられ続けるものだと。
やっぱり、愛情なんて……終焉がある脆いものなんだね。
ほろり。
涙が零れ落ちた。
気づいたらあたしは中央棟を出て、ハル兄に電話をかけていた。
『シズ!? どうした、なに泣いてるんだ? ナツは?』
「ナツ……モモのところ」
『モモ……? ……ああ、あいつか』
「ハル兄も知ってたの!?」
『だってあいつはナツの……違う、それじゃねぇ!! お前何年看護師してんだ!!』
ハル兄は……お医者さんだ。
忙しいから、別行動になったんだ。
あたし、なに電話かけているんだろう。
完全にお邪魔虫じゃないか。
ナツだけではなく、ハル兄にも――。
「ごめん、ハル兄。元気になった。お仕事頑張ってね」
『シズ? おい、シ……』
終話ボタンを押した後、電源ボタンを押してスマホを切った。
こんなものがあるから、あたしはハル兄を頼ってしまうんだ。
もっと現実を見つめて、自分の足で立て、静流!!
あたしは手の甲で涙を拭った。
「がんばれ、あたし!!」
依存しすぎていた自分から脱却する、いい機会じゃないか!!
そしてあたしは無駄に元気よくスキップをしながら図書館に入り、書庫に行こうとすると……司書のお姉さんに呼び止められた。
「書庫に入るには事前申請が必要ですが、されていますか?」
ああそういえば、ナツがそんなことを言っていた。
ナツは読書サークルだとかいうのに入っているから、顔パスなのだと。
……結局あたしは、ナツが居なければなにも出来ない。
独り立ちしようと思った矢先、こうして躓(つまづ)く。
この先に入りたいのに、あたしだけの力では入れない。
どうしよう……。
そんな時だった。
「彼女は、俺の連れです」
手を差し伸べたのは――。
「ああ、佐倉くんの……。だったらいいわよ? 内緒でね」
……クソメガネ。