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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
人影ない書庫の入り口付近――。
近くに誰もいないことを確認して、あたしはクソメガネに言う。
「なんであんたがここに……っ!!」
さらりとした黒髪を揺らしながら、黒縁眼鏡を人差し指でクイクイ。
見た目だけは嫌味なほどにいい男だ。
だけど――。
「そりゃあ俺はこの大学の学生ですから。部外者の貴方とは違います」
どうしてこう、突っかかってくるのだろう。
しかもダメージ大きい時に、こういう風に外野扱いされるとイラっとくる。
「部外者で悪かったわね。あんたこそ、書庫に顔パス出来るほど随分と司書さんと親密なお付き合いをしているようで。学生の本分はどこに?」
クソメガネの目が不愉快そうに細められる。
「それは、読書サークル活動を馬鹿にしてると?」
……あ、忘れてた。
こいつはナツと同じ、顔パスできるおかしなサークルの部長だった。
「馬鹿にしてないわ、テスト前限定、引き籠り読書活動頑張って」
「それが、世間一般では馬鹿にしていると言うんですが」
「あら、そうなの? あたし馬鹿だから気づかなかったわ。さすがは頭のいい、大都大学の学生さんでちゅね~」
ぴきん。
クソメガネのコメカミに青筋が立った。
ふふん。
お姉さんだって、いつも負けていないわよ。
「今日は随分と刺激的な物言いですね」
青筋立てながら微笑む姿は、ある意味ナツに通じて手強い。
「どうもありがとう」
こっちも大人の貫禄見せつけて、同じくにっこり返してやる。
だけどいつまでもこの状態を続けるわけにはいかない。
あたしは、自分の手で捜し物をするんだ。
「ねぇ、あんたはなんでここに? 二食とやらで、ナツと待ち合わせしてたんだよね?」
「ああ、早くにバイト上がることができた旨、ナツに何度かけても通話中でさっぱり連絡とれなくて。とりあえず売店より、こっちの方が近いから寄ってみたら、図書館内で不審者を見つけたんですよ」
「へぇ、不審者。今ドキの図書館は物騒だね。まぁあたし含めて外部の者も自由に入れるのなら、仕方が無いっていえばそうなんだけど……」
そう人ごとのように言ったら、
「俺が言った不審者は、あんただよっ!!」
お返しとばかりに、指をびしぃぃぃっと突きつけられた。