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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「不審者って……。まさか前にナツとあんなことこんなことしてたことを言ってないわよね。っていうか、知るわけないわよね、あんな卑猥なこと」
思い出して、かっと顔が熱くなった。
「ナツとこんなところで、そんなことしてたのか!? まさか……『イカサズコロサズ』、ここでとか!?」
「あ……まぁ」
正直者は嘘がつけない。
「まるきり不審者じゃないか!!」
「失礼ね。そんなことをして、イチャイチャした時期もあっただけのことよ。……ところで人様に指は突きつけない」
しゅんとなりながら、突き出されたままの腹立たしい人差し指をきゅっと握ったら……予想していなかったらしいクソメガネが固まる。そしてあたしはくいと反り返してやった。
「……っ!! ナ、ナナナツは!?」
結構勢いあまって反り返して、ぐぎって変な音したんだけど、なんで出るのが悲鳴じゃなくて動揺じみた声?
……なんで、顔赤くなったの?
怒り? それともM男の興奮とか?
「ナツは売店。しばらく通話中だったのは、本命と愛を育み、デートのお誘いしてたからよ。今頃幸せのお花が頭に咲いてるわ」
「……ナツの本命だからって、随分な発言だな……」
「あんたが通話中だった時のナツの電話相手はあたしじゃないわ。あたし、ナツの本命から外されの。ついさっき、ナツに過去の女にされました」
「はあ!?」
クソメガネは、ポッカーンとした顔だ。
眼鏡が半分ずり落ちている。
「夢はちゃんと寝て見ろよ。いい加減なこと吹聴すると、ナツが泣くぞ?」
最早丁寧語すらどこへやら。
クソメガネは、眼鏡をかけ直しながら妙に上擦った声で静かに言った。
「ちゃんと起きてるわ。あたしには挙動不審になったナツが、電話から可愛い子にアプローチしてた瞬間に立ち会ったのよ」
「ナツがあんた以外に、そんなことするわけねぇだろ。ナツは女から騒がれるけれど、遊び歩くようなチャラ男じゃないぞ?」
「ナツがチャラくないなら、本命ということでしょ? 優しさが仇になったみたいね。まさかナツもわざわざあたしから距離とって電話したのに、通話相手があたしの隣に座っていて、内容筒抜けだったとは知らないだろうけど」
頬肉が引き攣る。空笑いが止まらない。