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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
ああ、なんかもうこの話題嫌だ。
鼻の奥がつんとなってくる。
「その隣に座った女って、どんな奴だよ」
クソメガネが睨むようにあたしを見た。
なんであたしが睨まれる。
「今年の大都大学ミスコン優勝者らしい。ナツ好みの、超清楚系美人」
「……。あの、いい男と見れば尻尾を振りまくる、尻軽女か? ありえない」
「ありえるの!!」
「ありえないって。前にナツに相手にされず、俺のところに来て、それでも相手にしなかったら別の男のところにいったぞ?」
「……回り回ってまたナツに戻っただけのことでしょう? あ~、もうこの話はいいから、本の探索に行くわよ、舎弟」
「誰が舎弟だ。いいわけないだろう、能天気なあんたが、こんなに死にそうになってるのに」
突然クソメガネが、あたしの双肩を掴んで声を荒げた。
その顔は、いつになく真剣で悲痛だった。
「へらへら笑うゾンビになるな。俺に、ナツを奪い返してこいとか、実際のところをナツに確かめてこいくらい、いつものあんたなら言えるだろう!!
あんたはいつもガキ臭いのに、なんでそういう時ばかり物わかりいい大人ぶるわけ!?」
クソメガネが、クソメガネらしくないから。
「ナツが欲しいんだろ!? だったら簡単に他の女に渡すな!!」
なんでかじんとくるほど嬉しくなって、だからそれを隠そうとして……あたしの意識は、別方向へとそれた。
うわ、ナツなみに長い睫毛!!
クソメガネのくせに、なんでこう巧妙に顔のパーツが配置されているんだろう。
「聞いてるのか!?」
無駄に整いすぎた顔が至近距離で止まり、その絶妙なる造作をさらに目の当たりにして、あたしは感嘆と同時に、"男"としての艶を見た気がして、ドキドキしてしまった。
クソメガネをちょっぴりとでも意識するなんて、究極の現実逃避だ。