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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「サクラは名前で呼ばれるのを嫌がるから、だから僕は『サクラ』って呼んでいる。僕のスマホに『モモ』登録したのは、面白がった波瑠兄なんだ。サクラ専用の着メロ設定も、波瑠兄の指定」
クソメガネを見ると、頷いた。
「俺の目の前で。俺が……波瑠さんの行動に文句なんかつけられるわけないだろう?」
……ハル兄、だから電話口で『モモ』を知っているような物言いだったんだ。
「え、じゃあ、あたしの隣に座ったモモは!? 友達がモモって呼んでたよ。明日デートするって。白いフリフリの清楚系が好きな相手だって」
「モモ違い」
たった5文字で、クソメガネはあたしの苦悩を棄却した。
「だ、だけどっ!!」
「完全に偶然だ。第一、俺達はそのミスコン女の名前すら知らない。ナツ、お前春先に俺にも告ってきた、"尻軽女"覚えているか?」
「そういうの僕、いちいち覚えて無いよ。ミスコンなんていた?」
それは演技ではないようで、本当にナツの記憶にはないらしい。
「だけど……」
「しーちゃん、そのミスコン女との仲を誤解しているの? その子モモという名前でも、電話でその子、本当に僕の名前呼んでたの? そこまで偶然が重なるのなら、その子の悪意としか思えないんだけど。僕は電話していないんだから」
「え、ナツの名前……?」
そう言えば――。
「……『彼』としか言ってないような」
クソメガネが、やけに哀れんだ眼差しを向けてくる。
完全にあたしが、敗者だ。
「で、でもナツ、電話誰からか聞いた時にそう言えばいいじゃない!! それに離れて電話してたし」
「それは……。なんというか、しーちゃんの横で普通に電話して歩くのって、しーちゃんにもサクラにも悪いし」
「だ、だけど!! そこから先、モモちゃんからの電話、取ろうとしなかったじゃない!!」
するとナツはしゅんと項垂れた。
「前に……しーちゃん、病室でメール来た時、誰から来たのか全然気にしてくれなかったから、『モモ』っていう名前で……気にしてくれればいいなって……」
「はい――っ!?」