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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
――特別に俺様が、このパンツで小学校に通うことを許してやる。
こんな、戦時中のおばあちゃんも穿かないような、ダサダサパンツは嫌だと訴えたのに、ハル兄は許さなかった。
――小学校では、ヤバい菌を持つオトコのクソガキがわんさかいる。それからお前を守るありがたいものだ。オンナは第一印象こそすべて。
友達できるかな、お勉強できるかな。
……そんな夢に溢れて毎日が楽しいはずの小学校1年生。
――シズ、そのイチゴのパンツはなんだ!! 俺様の毛糸のパンツを穿くまで、学校には行かせねぇ!!
毎日、鬼の帝王がスカートを捲ってパンツチェック。
ズボンを穿こうものなら、お尻ぺんぺん。
あたしだって可愛いキャラクターもののパンツや、可愛い色のパンツを穿きたかったのに、許されたのは、赤青黄の三色限定毛糸のパンツ。
真夏ですら毛糸のパンツ。
……今思えば。
なんで学校ではき替えようとしなかったのか。
あたしはあの一年で、確かに風邪をひかずに、据え膳オンナの心構えと忍耐というものを鍛え上げられた。
そのおかげで、あたしはスカート捲りをされたことによってばれた…毛糸のパンツによって、クラスの…いや学内の男子からの好意を失った。
恋愛対象の異性として、好きも嫌いもわからぬこの時期。
増やそうとしていた友達が女性ばかりに偏ることをハル兄に訴えたら、
――さすがは、除菌効果のある毛糸のパンツ。
元凶を褒め称えて、なぜか帝王はご満悦。
今思えば、あの上機嫌なハル兄の表情は……帝王のロリコン魂が毛糸のパンツによって潤っていたからではなかろうか。
小学2年生になったら毛糸のパンツは義務づけられなくなったけれど、"毛糸のパンツオンナ"の噂は、逆上がりが出来るようになった時に見られた……毛糸のパンツを卒業したパンツ事情が露呈されるまで、その後もずっと続いた――。
ああ、おシモがひやひやの今――。
あの疎ましき毛糸のパンツを穿いてほっこりしたい…と思うのは、死に際の錯乱なのだろうか。
そこまであたしの身体は、冷えという現象に切羽詰まってきているのだろうか。