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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 
 そう、帝王ホテルのカジノで、ハル兄に勝負を持ちかけた……ナツによく似た雰囲気を持つ美貌の男が、ナツに酷似した柔和な笑みを浮かべていた。

 なんでここに?


 ハル兄が警戒心を抱き、確か調べさせていたハズだけど……。

 と思ったら、今までぷるぷるしていたモモちゃんがすくりと立ち上がり、あたしとアダルトナツとの間に割るようにして入り、互いの視界を遮った。


「……波瑠さんが異常に警戒してた。極力、あの男と近づけさせないようにする」


 それはまるで騎士の如く。


「あんたの情報を知っている時点で警戒の対象だ。ホテルの時もそうだが、あんたにわざとらしく向けてくるあの目線、どうも偶然ではない気がする」


 あたしが淫魔だということを知っていたアダルトナツ。


「あんたは狙われている身の上だということ、覚えておけよ」


 淫魔の渇望を、キスひとつで抑えたアダルトナツ。


 確かに彼は秘密があるのだろうが、


「一番厄介なのは、あんたがまるで警戒を抱いていないということだ。ただ単純にナツに似ているから、が理由じゃないだろう?」


 そうなのだ。あたしは皆が騒ぐほどに、やはりアダルトナツに敵対心や警戒心は抱かないのだ。

 逆に親近感を覚える。

 今ですら――。


 しっとりとしたその目線が、モモちゃんを超えてあたしと交差すれば、それだけで身体がかっと熱くなる。

 それはまるで欲情したかのように。

 眠れる淫魔が目覚める気配すらしてくる。


 危ない。


 そうあたしの心は警鐘を鳴らすのに、身体は喜んでいる。

 アダルトナツの視線のもとにさらされることを。


 まるで、主人に従順な奴隷のように――。

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