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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「Dangerous Scentが……、幼い方からお年を召した方まで、幅広い年齢層にて愛されるブランドになりつつあるのは、私にとっては嬉しい限りです」


 甘さが含まれた柔和な声が、マイクを通して拡声される。

 あたしに向けられる視線が、あたしに絡みつこうとしているのは……きっと自惚れなんかじゃない。


 吸引力の強いその瞳はナツの瞳とよく似ていて、だからこそ無条件に惹き込まれそうになるのを、モモちゃんの背中が遮るように動く。


 あたしを守ろうとする、頼もしい広い背中。


 しかしあたしはそこに感激するよりも、そこまでされると逆にアダルトナツが気になってしまうんだ。


 近づくのは駄目、見るのも駄目だと言われてしまえば、さらに気になってたまらなくなってしまう、これぞ王道人間心理。

 しかもあたしは、壁に「覗くな」という貼り紙がなされた穴があったら、旺盛な好奇心が刺激されて自ら進んで覗きにいって、墓穴を掘るタイプだ。


「Dangerous Scentは、Natsuという多彩な表情を表現出来る男性をモデルに起用することになって、私のイメージはさらに膨らみ……現在、彼を中心としたシリーズが……」


 アダルトナツが、ナツのことを語ってる!!

 ナツはバイト先のデザイナーについてよく知らなかったみたいだけれど、アダルトナツはナツのことを知っているのだろうか。

 知らないわけはないだろう、デザインした服のイメージとなる存在に。


 自分とよく似たモデルを見て、どう思っただろうか。


 同族嫌悪?

 自己陶酔?


 悪意? 好意?


 今、どんな表情でナツのことを語っているのか気になってたまらない。

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