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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
あたしの淫魔情報を知り、キスひとつであの厄介な発情淫魔を押さえ込められたのはなぜなんだろう。
ハル兄に対してもなにかを知ったような口調だったのはなぜだろう。
その弟に自分が似ている事実を、知らないわけはない気がするんだ。
仮に、モデルとデザイナーという……ナツとの接点を持たない環境にいても。
そう思えば――。
ナツは、本当にその美貌と表現力だけでDangerous Scentのモデルに選ばれたのだろうか。専属にされるまでになったのは、ナツの実力というよりは……モデル起用に影響力があるだろうデザイナーの"思惑"は、なかったのだろうか。
あんなに、格好いいポスターを演出できるナツが、いつも方向こそ違えど一生懸命頑張るナツが……、他人の掌の上でころころ転がされているだけだとしたら、ここまで屈辱的なことはない。
アダルトナツの出現は、偶然か必然か――。
あたしやママを狙うという変な機関と関係あるのかないのか。
警戒心は芽生えるんだ。
だけど――。
「今回は決勝戦に進まれた方々に、特別に男女ペアで私がデザインした水着をお配りしようと……」
警戒心以上の"なにか"が蠢き、アダルトナツをより身近に引き寄せたいと思ってしまう。
それは好意であり、親近感であり――、
どくんっ。
……発情であり。
「やば……っ」
モモちゃんの背中越し、空間に反響する甘やかな声音に、あたしの胎内の淫魔が疼いて反応している。
これ以上彼の声に呼応し、今完全に覚醒されたら……厄介だ。
悪いことにアダルトナツは、演説のように長々と甘い声を響かせ続けている。まるであたしの中の淫魔の、召喚呪文の詠唱のようだ。
ここにはハル兄もナツもいない。
いるのは……、
――あのふたりのレベルには届かないけど、普通のオトコよりは……よっぽど、特殊な体質のあんたにとって"特別"になりえるんだ。
モモちゃんと、
淫魔を揺さぶる元凶、アダルトナツ。