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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
「モモちゃん……、どうしよう……入れないよ。着替えられないよ」
下着を売店で買いに行く暇もない。トイレで拭くだけ拭いてみる?
ああ、だけど。トイレはあの更衣室の奥だ。
「仕方が無いから、モモちゃんのタオルを……」
その時、なんとか精神的に立ち直ったらしいモモちゃんが手を上げた。
「折角こんな素晴らしい水着を頂いたのですから、女性用のものがどういうものなのか見たいのですが。多分観客の皆さんは誰もがそう思われているとは思います。ここには見本が男性用しかありませんので」
凜とした声でそう言った。
やはり、アダルトナツから視線を妨げるようにしながら。
「それもそうだNE~。だけど女性フィギュアは……」
「ならば、彼女にそれをさせてもいいですか?」
モモちゃんは突如あたしを見た。
「彼女に、頂いた水着を着て貰い、皆さんにお披露目したく」
つまりモモちゃんは、あたしに下着代わりに水着を着せようとしているのだ、公然と。
頭がいい、モモちゃん!!
どうしてそんなことを、即席で思いつけるのだろうね。
そしてあたしは――。
モモちゃんの機転により、ステージの真裏にある事務室を借りて、着替えが出来るようになったのだった。
15分――。
あたしの着替えに許された時間が、他の人達は休憩時間となった。
「俺があのデザイナーを事務室には近づけさせないから、あんたはゆっくり着替えてろ。ちゃんと暖まってこいよ?」
優しいモモちゃん。
感涙だよ、あたしは。
「ありがとう、モモちゃん。感謝する。アダルトナツから離れれば、幾らか淫魔は落ち着くだろうし。とりあえず初出動は白紙になってよかったね」
するとモモちゃんは、微妙に拗ねた顔をする。
「別に……喜んでいるわけじゃ……」
「じゃあ出動したかったの?」
「……っ、もういいだろう、さっさと着替えてこい!!」
他意なく純粋な疑問だったのに、モモちゃんはプリプリしながらあたしを事務室へと追いやったのだった。