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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 
 

 事務室――。


 広さは8帖ほどくらいか。

 積み重なる段ボールや旗やポールなど雑多な備品に溢れ、真ん中にはスチール製の簡易長机と椅子が数個置かれてあり、ちょっとした休憩場所にもなりえるようだ。


 そして――。

 その椅子のひとつに、背筋をぴんと正して、姿勢良く座っているのは、



「ナツ!?」


 ……と思いきや、すました顔のあのフィギュアだということに、あたしはもう騙されない。

 あたしにだって、たとえなけなしだろうと、学習能力はあるんだ。

 多分、あたしがモモちゃんと色々話し込んでいる間に、安全な場所に避難させられたのだろう。

 ナツ人形が決勝戦の盛り上がりグッズとなり得ればこそ、血走った目で(股間を)見つめるあのハイエナ達のもとにさらしておくのは、優勝者決定までに、現状維持が困難で危険だと判断してのことか。


 しかしそのまま立たせておけばいいのに、まるで貴賓のように丁重に座らせるとは。しかも背中には大きなタオルまでかけられている。

 座らせることが出来るということは、関節も曲がるように作られているのだろうが、人形でもナツが大事に扱われていることに、心がほっこりとしてくる。


「リアルだよなぁ……。本当に生きてるみたい」



 ふわふわなミルクティー色の髪。

 長い睫毛に縁取られた、ココア色の瞳。


 真っ正面に回り、机の上に両手を置いて身を乗り出すようにして、至近距離でじっと見つめていれば、潤んだようにも思える甘い瞳に見つめ返されているようで、妙にドキドキする。

 今にも瞬きをしそうだ。
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